八王子から横浜線に乗ると、5分ほどで「八王子みなみ野」という駅に着く。八王子ニュータウン造成事業の一環として、1997年に開業した比較的新しい駅だ。駅の周囲はもともと宇津貫町という地名で、区画整理に伴ってその一部がみなみ野になったが、もちろんこれはあとからでっち上げた名前。ここから北東2.5kmほどのところに北野という土地があって、その南側にあるから南野にして、軽いイメージを演出するため平仮名を混ぜたのだろう。
こうした地名、俺などは場末の小料理屋みたいな感じを受けるんだが、実際は開発されたばかりのニュータウンなので、街は小綺麗で整然としている。人の営みに必ずつきまとうはずの淫靡さや猥雑さが微塵も感じられない、俺にとっては最も興味の湧かない種類の街だ。人が住む以上、こうした街にも猫は生息しているだろうが、恐らくその数はまだとても少ない。多摩ニュータウンの例を挙げるまでもなく、半世紀も経てばここも猫と老人だらけになるはずだが、それまで待っていたのでは俺の寿命が尽きてしまうので、試しに今日の散歩に組み込んでみることにした。歩いたコースは片倉から八王子みなみ野までの1駅間。
自宅を出ると、目の前にキジ白3号が座っていた。
昨日も会ったばかりだけど、今日は新規開拓(しかも猫影はかなり薄いと思われる)なので、保険に1枚撮らせてね。
手前の鼻黒は時々ここらで見かける子。初めて会ったのは、まだ幼い2011年8月のことだった(この写真の右側)。こちらの感慨など知らず、近寄ったら普通に逃げられるんだけれども。
片倉をスタートしたのは正午すぎ。駅近くに何箇所かある猫スポットはみんな空振りで、ようやく最初の猫に会えたのは30分後のことだった。……ちょっと分かりにくいかな。
近寄ったら警戒して場所移動。可愛らしいほこらと一緒に撮りたくて、頑張って呼んでみたけどダメだった。
ぽかぽかした日差しの中、開発対象から外れた里山を歩くのは最高に気持ち良かったが、猫の気配はまったくなかった。丘を越えて新興住宅街に入ると、わずかにペットボトルや猫よけのとげとげが見られたが、やはり行き当たりばったりに出会えるほど数は多くないようだ。これはもう店じまいかと思って駅に向かっていると、土壇場になって偶然の神様が微笑んでくれた。
きりっとした体格の茶トラ。横浜線沿線で猫探しする場合、片倉~八王子みなみ野~相原が最難関区間だと思っているので、ここをクリアできるなら、横浜線猫行脚もいいかも知れない。