前回も今回も、台湾で買おうとして見つけられなかったお土産にコーヒーがある。コーヒーはおおむね北緯25°~南緯25°の範囲で生産されているそうで、台湾だと先日歩いた桃園市あたりが北限となる。沖縄県なら宮古島、東京都なら硫黄島がそのぐらいの緯度だ。実際、台湾では中南部の高地でコーヒーが生産されているし、やや北限から外れるが、東京都の小笠原諸島でも、ごくわずかな量(年間200kgほど)が生産されている。
さほど生産量の多くない台湾のコーヒーは、どこでも自由に手に入れられるほど出回っていない。台湾旅行で買い物にあてた時間は15分ほどしかなく、そんなことで見つけられないのは分かっていたので、帰ってきてから雲林県古坑郷で生産されたというコーヒー豆をネットで注文した。少し値は張るが、これがとても美味しいんである。
さて、今日紹介するのは台湾猫散歩の第6回。前回の記事では瑞芳駅周辺の猫たちを途中まで紹介したが、この日泊まる予定の十分には18時ごろまでに着けば良く、瑞芳からは40分ほどで行けるので、時間はまだまだある。探せば無尽蔵にいそうな裏通りを行ったり来たりしていると、次はキジ白が目に入ってきた。
しかし、目が合うなり場所移動。数は多いが人懐っこい率は高くない。
近寄ったら隣の駐車場に逃げ込んだ。こうなってしまうと、隠れる場所は無数にあるからお手上げ。さいならー。
上から見下ろしているのは、凛々しい顔立ちのシルバークラシックタビー。台湾の外猫で、こういう飼い猫然とした猫は珍しいかも。ちなみに中国語ではシルバークラシックタビーを經典銀虎斑と言うらしい。マッカレルタビーは鯖魚虎斑。まあ漢字は書けるけどね。発音がね……。
繁華街を抜けて基隆河に出た。猫が1匹、気持ち良さそうにしている。
瑞芳散歩はここでおしまい。このあと駅に戻り、16:08発の菁桐行きに乗って十分を目指した。
平溪線は三貂嶺~菁桐を結ぶ延長12.9kmの短い路線で、ほとんどの列車が瑞芳を経由して深澳線の海科館まで直通している。1時間に1本、3両編成の気動車がのんびり走るだけのローカル線であり、実際乗ってみると立ち客はほとんどなく、それらのほとんどは十分で降りた。一方、十分で交換した上り列車はレジャー帰りの客ですし詰めになっていて、積み残しが出そうなほどだった。
こちらの人々は遊ぶ意欲がすごい。平溪線はもともと菁桐炭鉱の泥炭を運び出すために敷設された路線で、1987年に炭鉱が閉山してからは観光客誘致に力を入れている。前回訪れた九份も、もともとは金鉱で栄えた街で、閉山によって一時は寂れたが、どちらも今は有名観光地として名を馳せていて、客足の途絶えることがない。かつて日本にもたくさん存在した炭鉱路線が今どうなっているか考えれば、その差は歴然としている。
まあそんなことはどうでもいいんだが、とにかく十分に着いてびっくりしたのが人の多さだった。平日の夕方なら空いているだろうと思って油断していたが、ここには天灯飛ばしというイベントがあることを忘れていた。日が暮れたら暮れたで、ロマンチックな夜の部が始まるのだった。
こんなに人が多いのでは、今日の猫探しは店じまいかも知れない。そう思って駅裏の喫煙所に行ってみると、意外なことに1匹の茶トラが空を眺めていた。
人出を嫌って引っ込んでいたのかな。そろそろ日没が近いので、巡回に出るようだ。
案の定、茶トラも登ってきた。少しだけ道端に佇んだあと、小走りで茂みの中へ消えていった。
十分老街は賑わっている。少しお腹が空いてきて、雞腿飯の看板に引き寄せられて中を覗くと、店先に猫がいた。
旅の英会話帳を参照しつつ、「何か食わせろ」と話しかけてみたが、店主に首を振られてしまった。なぜ台湾会話帳じゃないのかというと、発音が難しくてどうせ通じないからだが、店の名前からすると、お互い日本人だったのかも知れない。絶望に打ちひしがれる傍らでは、家族連れやカップルが天灯上げに興じていた。
日没とともに打ち上げ花火が始まって、老街はいよいよ盛り上がってきた。旅の記念に俺も天灯上げに参加しようかとも思ったが、さすがに一人でやる度胸はなく、猫をひと撫でして宿に向かったのだった(猫の登場しない動画はこちら)。
台湾猫散歩は残り2回。次回は雨の十分から。