3回に渡って掲載したじめじめ散歩は、猫の数もさることながら、毛色のバリエーションが豊富な散歩だった。
俺が見かける毛色は黒白がいちばん多く、その理由は目立つからであろうが、実際に個体数が多いのは恐らくキジ白だと思う。目立つべきか目立たないべきかというのは、猫にとって微妙な問題で、家畜として生活の一部を人間に依存している以上、多少のリスクを負うにせよ、存在を知ってもらわないことには美味しいものが出てこない。かといって目立ちすぎると、カラスに襲われたりもするから、どちらの毛色も一長一短で、結果的に同じくらいの割合になっているものと思われる。
イエネコは野生のリビアヤマネコが家畜化したものなので、飼い主を持たない「野良猫」であっても、人間に頼らなければ生きていけない。一方、人間に頼らずとも自力で食料を捕獲し、繁殖することのできる「野猫」というのも出現している。野猫は捨てられるなどしたイエネコが再び野生化したもので、天敵の少ない島嶼部などで数が増え、生態系を破壊するとして問題視する人もいる。
隔絶された島に棲む野猫が世代を重ねれば、ダーウィン進化に従って、その環境に適した毛色に収斂していくものと思われる。それは一体どんな毛色だろう。イエネコの野生型の毛色はキジトラだが、これはもともと砂漠出身のリビアヤマネコが纏っていた毛色だ。日本のように四季のある環境なら、キジトラよりも、秋の茶トラや冬の白猫の方が有利に思える。
しかし不思議なことに、日本に生息するツシマヤマネコやイリオモテヤマネコも、リビアヤマネコと同様に、キジトラ(というかアグチパターン)の被毛を纏っているのである。日本に棲むほかの食肉目や齧歯目の多くもそうなのだから、環境がどうであっても、最後に残るのはキジトラと自然の摂理で決まっているのかも知れない。野生化して野猫になったばかりの猫たちは、街なかで見かけるのと同様、茶色とか黒とか白とか色々だと思うが、それらが長い時間をかけてキジトラに収斂していく様はとても神秘的だ。ただしそこへ至るには、幾多の屍を越えなければならないであろう。
思いっ切り脱線してしまったが、きりがないので猫たちの紹介を。サバ白1号ほか3匹の次に見かけたのは、物置の上で寝ていたキジ渦。まあとっくにバレているんだけれども。
以前たまに見かけた黒白や茶トラは元気にしているんだろうか。もう少し頻繁に来れば会えるのかも知れないが、今は遠くなってしまったからなあ。
線路近くの黒っぽい路地に差しかかると、久しぶりに黒っぽい猫たちが出ていた。
何度も会っている馴染みの黒なのか、真っ黒なだけにいまいち自信がない。宇宙戦艦ヤマトの真田志郎みたいな目つきだから、間違いないと思うんだけれども。
相方の黒白は車の後方に引っ込んでいた。「黒い路地」ではなく「黒っぽい路地」なのは、この子がいるから。
線路を渡って再開発ファミリーの縄張りに寄ってみた。時刻は11時近くになっていて、みんなお昼寝しているのか出てこない。しばらく待ったあと諦めて歩き出すと、向こうから巡回中の黒白がやって来た。
大変な無関心さで通過して行った。子供のころは人懐っこかったのにー。
何となく保護色のようにも見える。まさか見つかるとは思っていなかったような顔つき?
お昼寝中のキジ白4号。ここまで来たということは散歩も終盤。あとは以前住んでいた家の前を通って、駅に出るだけ。
鬱蒼として暗かった路地は、新道開通とともにずいぶん開放的になった。着工直前(2011年9月)までは突き当たりまで茂みが続いていて、付近全体が猫たちの遊び場になっていたが、立ち退きが進むとともに、こいつと麦わら1号を残してみんないなくなってしまった。
4時間に渡る長い散歩を終えて、疲れた体を預けるようにして自転車を漕いでいると、駐車場でトラ子さんが丸くなっているのを見つけた。
曇りがちな天気からして、この辺にもたくさんの猫が潜んでいるに違いないが、もはや体力ナッシング。走っている自転車を止めるのさえ億劫だったので、このあとは家まで寄り道せずに帰った。
明日は夜勤明けの帰りに参院選の投票に行くので、投票所の付近で猫を探してみるつもり。