ふるさと猫紀行(函館編・その2)


函館市の猫

 食糧を探すわけではないので、マサイ族のように5.0の視力は必要ないにしても、せめて1.2くらいないと遠くの猫が分からない。視力の低下を感じるようになってからずいぶん経ち、猫探しに支障を来していたので、今日は眼鏡を新調しに八王子へ出かけてきた。無論、俺はおっさんであるから、老眼も相当程度進んでいて、単焦点レンズを選ぶなら、遠近どちらかを諦めなければならない。SEという職業柄、パソコンの画面を眺めている時間は長いが、そんなことはどうでも良く、遠くの猫を見つけるため、できる限り近視を矯正する方向でお願いしてきた。モノは1週間後に出来上がる。
 今日紹介するのは北海道旅行2日目(9月28日)の函館散歩の続き(前回はこちら)。この日は未明に寒冷前線が通過した影響で、朝のうちやや強い雨が降っていたため、9時半近くになってようやく散歩を開始したのだった。
 スタート地点は市電の函館どつく前電停。「どつく」は殴るという意味の関西弁ではなく造船所のことで、電停から数百mのところに巨大な船渠が並んでいる。ここを起点にして、函館山の裾野に広がる古い街並みを歩くのがこの日の前半のコース。西部地区と呼ばれるこのエリアは函館観光の中心地であり、夏のセーラー服が超絶可愛い俺の母校のある街であり、そしてまた、あちこちからニャーニャー聞こえる猫の街でもある。
 函館港を望む道路脇に建つのはかつて領事館だった建物で1908年の落成。門柱のたもとには猫もいて、函館名物が揃った感じだ。
函館市の猫

函館市の猫

函館市の猫

 鉄の門扉は固く閉ざされ、奥を窺い見ることはできない。建物内部は老朽化が激しく、危険箇所が多いため、公開したくてもできないそうだ。函館市は貧乏な上、こうした建物が多すぎて、修復の予算が追っつかない。
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 まあ俺は君に会えたから満足だけどさ。
函館市の猫

 石畳の街路にはナナカマドが真っ赤な実を実らせている。高校の3年間通った道だが、俺の記憶にこの赤い色はない。卒業してから植えられたのかも知れないし、恋人の顔ばかり見て気づかなかったのかも知れない。しかしあれから何十年も経って、俺の注意力は鍛えられ研ぎ澄まされているのであった。
函館市の猫

 ほらいた。
函館市の猫

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 セミロングキジトラのお母さんは目がまん丸。びっくりさせるつもりはないんだけど……。
函館市の猫

「どひゃー、逃げるのよー!」
「お母さん待ってー」
函館市の猫

「ニンゲンは大きいねえ。ドキドキするよ」
函館市の猫

「逃げ遅れた私はいったいどうすれば」
函館市の猫

 次の猫も坂道猫。巡回帰りと見えて、疲れた感じでとぼとぼ歩いていた。
函館市の猫

函館市の猫

 民家の敷地へと消え去る前にこちらを一瞥。やっぱりバレていたか。
函館市の猫

 前半の散歩を終え、青柳町の電停にたどり着いたのは11時半すぎ。もう少し西部地区を歩いていたかったが、朝の雨でスタートが遅れたため、千歳へ向かう特急列車の発車まで2時間あまりしかない。後半に予定していた時任町~大森浜界隈は、何十年も前に恋人と逢瀬を重ねたというだけの場所ではあるが、再び訪れる機会があるとも思えないから、最後にもう一度歩いてみたかった。
 ……というわけで12:08、中央病院前の電停をスタート。10分ほど歩いたところで最初の猫に遭遇した。
函館市の猫

 西部地区は港町だから猫は多いだろうけど、ただの住宅街も負けてないね。もしかしたら台湾より多いかも。
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 さらに毛繕い中のが1匹。
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 函館はキジトラ系が多いみたいね。
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 次の猫はブルーアイ。キジ白がカラーポイント化した毛色だから、やっぱりキジトラ系。
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 民家の庭伝いに逃走を図ったため、先回りして待ち伏せしてみた。
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「ひえー」
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 函館最後の猫は古びたマンションの外階段で。
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 私は通りすがりの旅の者です。写真を撮らせてくださいな。
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 最後に会えたのが君で良かった。俺の指の匂いを覚えておいて。
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