プチという割にたくさんの猫に会えてしまった1泊2日の台湾旅行。初日の雨は残念だったが、菁桐や瑞芳では美味しいものを食べられたし、日本に持って帰る池上米も買えたし、寒いことを除けば楽しい2日間だった。帰国日の3月9日は雨が上がり、朝早くから瑞芳、暖暖、基隆の順に猫を探して、13時すぎには自強号で帰途についた。復路は桃園を16:20に発つ飛行機を利用したので、散歩できるのはほとんど午前中に限られた。
今朝はヘタレてしまって早起きできず、出勤前の散歩をお休みしたので、そんなプチ台湾旅の最終回を載せることにする(前回はこちら)。暖暖媽祖廟の黒い2匹と別れ、次に見かけたのはとあるマンションのエントランス。だいぶ離れているのにもうバレてるし。
ずいぶん警戒してるみたいだけど、私はただの猫好きな日本人ですよ。會當翕相無?
「糟糕的發音當然是日本人(発音が悪いから日本人なのは確かだろうな)」
黒白は路地の奥へ走り去り、そんな様子を小柄な三毛が見つめていた。どうやらここも猫の巣窟のようだ。
怪しんではいるようだけど、黒白みたいに逃げてしまわないのは、きっとまだ子供だから。でも指の匂いは嗅いでもらえない。
さらに三毛がもう1匹。みんな同じような年恰好なので、兄妹なのかも知れない。いちばん先に逃げ出したのがお母さんだったりして。
暖暖散歩は以上でおしまい。このあとバスに乗って基隆へ移動した。
俺は最近まで知らなかったのだが、基隆というのは雨の街だそうで、事実、今までも何度か旅程に組み込んでおきながら、悉く雨に降られて流れた。今回ようやく念願叶って散歩できたが、先に結論を書いてしまうと、この街はもっと時間をかけてゆっくり歩きたいと思った。理由の一つは、街の中心である基隆港の周囲が山に囲まれていて、特に今回歩いた北西側は急峻な斜面に街並みがへばりつき、休み休みでないと体力が持たないから。そしてやはりここも猫の巣窟で、いちいち足止めを食うため、2~3時間ではとても回り切れないから。17世紀ごろから世界中の船舶が入港していた基隆港は、恐らく世界中の猫が集まる街でもあったはずだから、毛色の観察などしていたら、あっという間に時間が経ってしまうだろう。この街にはまた来なければならない。
それはさておき、基隆猫の1匹目はごく普通のキジ白。
はあはあ言いながら細く曲がりくねった路地を上り、もう海が見えるころかなと思って振り向くと、海の代わりに猫がいた。
被毛が真っ白という形質は、気候の寒冷化に備えた遺伝だろうから、台湾のような熱帯にはいないと思っていた。とはいえ考えてみれば、気候区分というのは無段階的なものだから、そこに分布する生物相も少しずつ変化していくはずだ。赤道が近くなるにつれて減少はしても、台湾ぐらいではゼロにならないのかも知れない。あるいは先ほど書いたように、船のお守り(実務的にはネズミ要員)として遠い国から航海してきて、台湾に根付いた猫なのかも知れない。
なお、この子は純白ではなく、右耳の付け根やひげ袋の右側などに、ごく薄いレッドが見える。
白のいた駐車場は、港を見渡すには高さが足りない。もう少し上るかと思って見ると、眼下に毛繕い中の猫がいた。
この街の猫はこのように出現するのだろうが、その度に下りたり上ったりするんじゃ体が持たんな。
時刻は12時半をすぎ、帰りの自強号の発車まで40分。海は見えたし猫もいたので、満足して下りてくると、とある横丁でまた発見。
いちばん奥ののほほん顔で多少救われた。
ちなみにこの子たちを見かけた路地は、先ほどの港を望む高台から基隆駅前まで、二つの地点を一直線に結んでいる。ざっくり調べたところ水平距離は220m、標高差は40mで、計算すると18%という日本ではちょっと考えられない勾配となる。そんなところまで猫とスクーターが行き来していることに台湾のパワーを感じつつ、このあと自強号で桃園を目指したのだった。好きな街がまた増えた。