4時間15分、12.6kmに渡る台南散歩を終えたのは11:20だった。白砂崙へ向かうバスは1時間前に発車していて、次は14:20まで来ないからもう諦めなければならない。行き先を失った俺は台南後站のベンチに腰掛けたまま、行き交う学生の群れをぼけっと眺めていた。台湾猫旅の帰国日、2018年11月16日は朝からやたら蒸し暑く、リュックを背負っての散歩は、残っていたすべての体力を奪い去り、しばらくの間そこから動くことができなかった。
台南駅と台南空港は5kmほど離れていて、タクシーなら15分もあれば着く距離だが、飛行機の出発まで4時間もあり、今から行っても時間を持て余してしまってむしろ辛い。動物天国の台湾とはいえ空港内に犬や猫はいないだろうし、いたとしても軍民共用空港だから写真は撮れない。もう一箇所、どこかで猫を探すべきであろうと結論を出して、重い体を引きずりつつ、自動改札に悠遊卡をかざして駅構内に入った。空港から遠くなく、疲れ切った体にも優しく、それでいて猫に会える場所を思いついたのだった。
まだ記憶に新しい岡山の猫だまりに着いたのは12時半前。最初に見かけたのは若い茶トラ白だった。2018年1月に訪れた時は茶系猫を見なかったように思うが、母猫と思しき三毛はいたので、茶色のO遺伝子はあって然るべき。
台湾の猫はスリムなのが多い。うちのサチコみたいに単なる痩せっぽちではなく、精悍に見えるのは、野外で暮らしているからなのか、それともそういう血筋なのだろうか。
一応ここは高雄市岡山区というれっきとした直轄市(日本の政令指定都市に相当)だが、後站(駅裏)となると台湾ではどこも冷遇されていて、岡山もその例外ではない。時代を10年遡ったような街並みに自転車がのんびり通り、猫がそれを眺めている。
車の陰になって毛色の分からない猫2匹。まだ若い子のようだね。
車の下から出てきたサバトラは露骨に迷惑そう。そんな顔されたら日本人凹むよ……。
スモークちゃんは人懐っこい子。構っているうちに打ち解けて、姿勢が崩れてきた。可愛らしい動画はこちら。
ころんころんして本当に可愛い子。お持ち帰りしたいくらいだったが、動物を連れて国境を越えるのは並大抵ではないのだよなあ。
そろそろ空港に行かなきゃ。土壇場で愛くるしいのに会って、後ろ髪引かれることになっちゃったな。
岡山から后里行きの区間車に乗り、台南の一つ手前の保安に到着したのは13:53。台南空港はこの小駅が最寄り駅で、それを当て込んでか、駅前の小さな広場には数台のタクシーが客待ちしていた。地味な服装の日本人然とした日本人が乗ろうというのに、カタカナ読みの「台南航空站」はここでも頑として通じない。バックパックを背負った外国人が空港以外にどこへ行くというのか。筆談で站を砧と間違って書いたら笑われ、憮然としてタクシーに乗り込むと、あとは順調で10分もせずに空港に到着した。
台南空港は国際空港ではあるが、毎日運航の国際航路は香港行きとホーチミン行きが1便ずつあるだけで、俺が乗る関空行きは火曜日と金曜日の週2便のみ。だからなのか、イミグレを担当する係官はたった一人で、のんびりやるものだから、やたら時間がかかった。台湾南部の空港というと現状では高雄が最大だが、重工業や海運で発展してきた高雄市は経済の地盤沈下が著しく、観光資源の豊富な台南にいずれ追い越されるかも知れない。
最後に今回の猫旅の集計を。初日の11月12日は台北市南港区で4匹、新北市瑞芳区で10匹、基隆市七堵区で8匹の計22匹。11月13日は最も充実していて、花蓮県萬榮郷で2匹、花蓮県瑞穂郷で14匹、花蓮県玉里鎮で12匹、台東県台東市で9匹、台東県金峰郷で7匹、台東県太麻里郷で16匹の計60匹。最も気温の高かった11月14日は高雄市三民区で5匹、高雄市鼓山区で10匹、彰化県田中鎮で7匹、南投県水里郷で4匹の計26匹。干し柿の鮮やかなオレンジ色と牡蠣殻が印象深かった11月15日は新竹市東区で2匹、新竹市北区で2匹、新竹県新埔鎮で2匹、雲林県台西郷で17匹、雲林県西螺鎮で3匹の計26匹。帰国日の11月16日は台南市安平区で19匹、台南市中西区で2匹、台南市北区で1匹、高雄市岡山区で6匹の計28匹。5日間の合計は162匹だった。
今回は天気に恵まれて、東西南北で猫に会うという目標は達成できたし、たくさんの猫に会えたのも嬉しかったが、後処理が多すぎて、記事の執筆も半ば苦行と化してしまった。もし次回があるとしたら、今度はもう少し抑え目にやらないと、心も体も持たないと思った。
ちなみにプランはもうほとんどできているんだけれども。