「ハケ」という語は、一説にはアイヌ語のパケ(端っこの意)が転訛したものだそうだが、現在はごく限られた地域において崖線を表す方言になっている。アイヌ語が語源という割に北海道では聞いたことがなく、むしろ上京後、都心から都下へ引っ越したのちに耳にするようになった。立川崖線を擁する府中市内では、散歩道の案内看板に「ハケの道」というように紹介されていて、ハケ下とハケ上を結ぶ坂道には、「おっぽり坂」「まむし坂」「かなしい坂」などなど、独特の名前がつけられている。府中市内へ引っ越してきて、これらの道を歩くのを楽しみにしていたんだが、仕事の行き帰りに坂道を歩くというのは億劫なもので、未だ実現に至っていない。とはいえ多摩川流域を歩くということは、すなわち河岸段丘を歩くということであり、これまでも猫を探して無名無数の坂道を行き来していることは言うまでもない。
今日の散歩は自宅から出発して府中本町を経由し、立川崖線に沿うハケ道を東府中まで歩いてみた。このコースを歩く時、かつて必ず立ち寄っていたのはモノクローム爺さんのねぐらだったが、残念なことに2匹の爺さんは昨年暮れから年明けにかけて、相次いで死んでしまったとのことだった。11月7日を最後に何度訪ねても会えず、先月25日になって、2匹がねぐらにしていた商店の人に消息を尋ねて初めて知ったのだった。涙ぐむ店主から話を聞くうちに、もらい泣きしそうになったりもして、平静を装うのにかなり苦労した。それ以来、何となくそちら方面には足が向かずにいたが、ブログを読んでくれている人の中にも爺さんの出番を待っている人がいるかも知れず、いずれ記事にしなければと思い、今日のコースに選んだのだった。
1匹目はご近所さんの黒白。目を細めているのは歓迎していないから。
モノクロ爺さんはいなくなってしまったが、その周囲は未だ猫影が濃い。1本隣の路地には茶トラが潜んでいた。
いくら呼んでも出てこない。そのくらい用心深いのがちょうどいいのかもなあ。
反対側は毛玉の束ができている。太っているとはいえ、毛繕いできないほどではないように思うんだが、梳いてくれる人(または猫)がいないと、割と簡単にこうなるのかも知れない。
久しぶりなのは茶トラが2匹揃ったことで、実に2年ぶり。
目元がそっくりなので兄弟だと思うが、こちらは毛色がやや薄い。かといってクリームとは色調が違うので、恐らくティッピングを伴うカメオタビーだと思う。
民家の敷地に佇む薄色三毛。この子の茶色部分がいわゆる「クリーム」。
俺の体は一つしかなくて、時間も限られている。新たな猫拠点を追加するためには、過去のどれかを諦めなければならないので、府中市内を新規開拓することには何となく消極的だった。しかし、そうこうしているうちにモノクロ爺さんがいなくなり、ほかの拠点も徐々に数を減らしたり消滅したりしている。やるなら暑くなる前にやっておかないと、のちのちキツいことになるだろうな。