一昨日から昨日にかけて恒例の猫温泉に行ってきた。
最寄り駅の分倍河原から福島まで、最速列車ならわずか2時間で行けるのに、わざわざ9時間近くかかる旅程を組んだのは、寄って行きたい場所があったからだ。朝6時すぎに自宅を出発し、立川からはJR東日本名物のぼったくり特急「おうめ2号」で東京へ。新白河まで東北新幹線に乗り、さらに東北本線の下り列車に乗り換えて、1駅隣の白河に到着したのは9:22だった。最速列車ならとっくに福島に着いている時間だ。
新白河は新幹線の駅としては日本で唯一、村に設置されていて、一日の乗降客数は2,100人程度で推移している。北海道新幹線の奥津軽いまべつ(同66人)のように悲劇的な数字ではないにせよ、マイナー駅であることは確かで、俺も妻も利用するのは初めて。お昼前にここでレンタカーを借りて、経由地である那須どうぶつ王国へ向かうことにしていたが、その前に白河市内を散策してみようということになり、市街地に近い在来線の白河を下車駅に選んだ次第だ。まったく知らない土地ではあったが、Googleストリートビューで見る限り、白河小峰城を始めとする史跡や散策路が美しく整備され、妻とのんびり散歩するにはいいように思えた。もう一つ、この街を面白いと感じたのは町丁名で、例えば一番町〜九番町、勘定町、鷹匠町、細工町、大工町、年貢町といった城下町特有の地名が数多く残されている。今はどこの自治体も町名地番整理が進み、長い歴史を持つ町丁名が次々に失われているので、地図でこうした名前を見るだけで嬉しくなってしまう。ぜひ自分の目で街を見て、あわよくばそこで暮らす猫たちにも会ってみたいと考えたのだった。
なお、先に結果を書いてしまうと、この日(28日)は何と那須どうぶつ王国の休園日で、楽しみにしていたスナネコやマヌルネコに会うことはできなかった。動物園や水族館というのは生き物を扱っているのだから、休むという概念はないものと思い込んでいたが、天下の上野動物園にも週次の休園日は存在しているのである。那須高原の長いだらだら坂を車で登って、入口に休園日の札がかかっているのを見た時は、絶望のあまり崩れ落ちそうになったが、よく考えてみれば、俺たちにはイエネコという強い味方がいるではないか。Felis margaritaやOtocolobus manulと同様、イエネコだってFelis silvestris catusという立派な学名を持つ独立した生物種で、おまけにカラバリも豊富だ。猫温泉に行けばとりわけ人懐っこいのがいて、時には布団にまで入ってくるのだから、がっかりすることなど何もないのである。
……長くなるのでまずは白河の猫を。
屋根の上で休んでいたのは若いサバトラ。舌を鳴らしたら様子を見に出てきた。
可愛らしい2匹につられて前に出たら、サバトラが逃げてしまい、妹と思しきキジトラが取り残された。君のお兄ちゃんは割と薄情だね。
あとを追って隣の路地に回ってみると、2匹に増えていた。駆けてきたのは手前のキジ三毛。
おっぱいの感じからして、奥の黒三毛はお母さんだね。どこからか子猫の鳴き声が聞こえると思ったよ。
腰を下ろして様子見モードへ移行。このふくよかさは飼い猫だろうな。
白河〜新白河の散歩で見かけたのは以上の5匹。いずれも「巡り矢」とか「風神下」といったカッコいい名前の土地に住む猫たちだった。白河には面白い地名がまだまだたくさんあるので、機会があればまた歩いてみたい。
その後、新白河駅前からレンタカーに乗り、那須どうぶつ王国のゲートで絶望したのは前述の通り。代わりにほかの施設に寄ることも考えたが、それより早く宿に着いて猫たちとまったりしたいと思い、そのまま東北自動車道をかっ飛ばして、山奥の一軒宿にたどり着いたのは15時少し前だった。太陽はすでに山の稜線に隠れていて、10℃を割り込んだ屋外に猫たちの姿はなかった。
ぴーちゃんが遊びに来てくれたのは、ストーブを焚いて部屋が暖まったころ。
カメラに収まるのは2年3ヶ月ぶりの黒猫ぴーちゃん。山の中をほっつき歩いて1ヶ月も帰ってこないような子なので、こんなに懐いてくれるとは思わなかった。
落ち着きのない黒猫を天井照明で撮るのはとてもムズカシイ。動き回るぴーちゃんは動画で記録したのでこちらをどうぞ。宿の猫たちは次回の記事でも紹介するのでお楽しみに。