はるひ野の丘でまだらの家族に会ったのは2017年10月のことだった。
このブログで「まだら」と分類している毛色は、シルバーや黒の被毛にティッピングが生じて、生え際の色が白く抜けていることが特徴だ。白抜けの幅を司る遺伝子(ワイドバンド遺伝子)というものが存在し、その遺伝子型によって白抜けの幅が変わるので、毛色に不規則な明暗がまだら状に生じる。白抜けの幅によって、小さなものはスモーク、中程度のものはシェード、毛の大部分が白抜けして本来の色が先端にしか残っていないものをチンチラと呼んで区別することもある。I遺伝子座が優性のI-に変異することで、キジトラ(アグチパターン)の褐色部分が白に変わってシルバーになり、かつWb遺伝子座が優性のWb-になった時に幅が変化するとされているが、どちらも同定されていない遺伝子であり、これらは血統猫の繁殖家が経験的に導き出した仮説だ。
まだらの毛色は街なかでも時たま見かけるが、それほど頻繁というわけではなく、2017年10月に初めてまだら家族に遭遇した時は、かなり驚いたものだった。キジトラのシルバー化もワイドバンドも優性遺伝なので、理論的にはさほど珍しくないはずだが、それまでそのような猫集団に遭遇したことがなかった。ティッピングのレベルもスモークからチンチラまで各種取り揃えで、この日の記事だけでまだらのサンプル写真がすべて撮れたくらいだった。
ところがこの家族、ある時期から徐々に数が減り始め、残った個体も毛並みが荒れていき、ついには去年の2月3日を最後に1匹もいなくなってしまった。もちろんその後も何度か様子を見に行ってはいたが、何しろはるひ野というのは丘陵地帯に展開する住宅地なので、仕事の行き帰りに歩き回るのはかなりしんどい。猫に会えればまだ救われるが、そうでなかった時の徒労感が半端ないので、ここしばらくは足が遠のいていたのだった。
今日は朝からよく晴れ渡って絶好の散歩日和となり、明日から二連休でもあるので、久しぶりにはるひ野の丘を訪ねてみた。どうせ猫なんかいないだろうという予想に反して、スタートから10分もせずに1匹目に遭遇。約1年ぶりに見かけたのは、やはりまだらのシルバーだった。ちょうど近くの民家で食事タイムだったらしく、ほかにも5匹ほど駆けてきたが、写真奥で固まっているキジ白も含め、この子以外はみんな逃げた。
きちんと分類するならシルバーシェード(shaded silver mackerel tabby)だろうが、このレベルのティッピングなら単なる銀トラ(silver mackerel tabby)に分類してもいいと思う。まだら家族が暮らしていた高台からは200mほど離れているが、この子はきっとあの家族の子孫なのだろうなあ。
まだら家族の高台を覗いてみると、アパートの裏から見覚えのある茶トラ白が出てきた。
ここで最後に猫を見た去年2月、ヨレたシルバーチンチラと一緒にいたのがこいつだった。毛並みの荒れ具合から、もう会えないかも知れないと思っていたが、無事だったんだなあ。
まだら家族の高台から坂を下りて上ってまた下りて、次に会ったのは駅前の白だった。先客に撫でられ終えるのを5分ほど待ってから撮影開始。
見た目からは信じがたいが、この子は今年で19歳になるそうだ。15年以上も外で暮らしているというのに、毛艶もいいし、手触りも滑らかで、人間換算で90歳超えとはとても思えない。
丘陵地で猫に会えなかった時のために、今日は中野島にも立ち寄るつもりで、その予定通り既知の猫拠点へとやって来た。時刻はすでに12時半で、猫はとっくにお昼寝している。
これも立派な銀トラ。まだら家族の家からは8km以上離れているので、さすがに無関係だね。
帰途につく前に猫拠点をもう一箇所。いつもこんな写真ばかりで済みませんね。
「写真を撮りたいと? 僕は構いませんよ。これでもモデルはよく頼まれる方なんですよ」
隣の駐車場でとぐろを巻いていることの多い猫たちだが(一例)、日曜日は人通りが多いので、こうして静かな場所で休んでいるようだ。