以前から噂は耳にしていたが、先日ゆっくり邸の主人と話した時に、猫の腎臓病の特効薬が近く誕生する見込みであるということを初めて具体的に聞いた。従来のように進行を遅らせるのではなく、「治す」ことのできる画期的な新薬なのだそうだ。
イエネコに限らず、ネコ科の動物は慢性腎不全からの尿毒症で死亡するケースが多い。これはネコ科動物の宿命とも言える疾患で、原因不明のため治療法もなく、我が家のサチコがそうしているように、食餌療法などで進行を遅らせるしかなかった。ところがその新薬は、腎臓に溜まった老廃物を取り除くAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)というタンパク質を合成し、猫に投与することで腎機能の著しい改善が見られるという。AIM自体はネコ科だけでなく、ほかの動物(実験ではヒトやマウス)においても、IgM五量体というタンパク質と結合した状態で、血液中にたくさん存在している。ところが腎臓の老廃物を検知した時、AIMがそれを取り除く働きをするのはヒトやマウスだけで、猫の場合はIgM五量体にくっついたまま何もしないのだという。そこでAIMを人工的に合成し、体外から投与して働かせようというのがこの新薬というわけだ。
ゆっくり邸の主人はこれまでに多くの猫を看取っており、療養中のも複数いるので、こうした新薬の登場は待ち遠しいことだろう。「抗体薬は値段が高いだろうなあ」と心配していたが、従来の対症療法も長期に渡ることが多いので、累積すればそれなりに財布には厳しいし、精神的に疲弊するということもある。我が家のサチコなども数値的には初期の腎不全だが、好き嫌いの多さゆえ、食餌で管理することに困難を感じている。体に良いと思ったものを東奔西走して用意しても、食べてくれないのである。
AIM製剤の実用化は、猫たちにとってバラ色の未来のようにも見えるが、その一方で、AIM製剤を我が家の猫に適用したいかというと、必ずしもそうは思わない。ネットの記事に書かれているように、この薬は猫の寿命を30歳以上に延ばす可能性を秘めているかも知れないが、人生というのは単に呼吸や排泄をするだけでなく、身体や精神のバランスが取れて初めて謳歌できるものだ。新薬が良くしてくれるのはあくまで腎臓だけであって、関節痛からは解放してくれないし、抜けた歯は二度と生えてこない。場合によっては認知症が進んで介護が必要にもなるだろう。サチコやマコちゃんの温もりを少しでも長く感じていたいのは山々でも、老いてヨレヨレになった姿で30年も生かしておくのはあまりにも酷だと思うのである。人間の寿命を200歳以上に延ばす薬ができたとして、自分の親や配偶者にそれを飲ませて、いったい誰が幸せになるのか想像してみれば、この感覚を理解してもらえると思う。
前置きが長くなってしまった。今日の夜勤前の散歩は日野から甲州街道まで。1匹目は民家の濡れ縁で毛繕い中のサビ。
こちらに気づいて動きを止めたところ。ちょっとだけそのままでいてね。
固まったままのサビにお礼を言って、次にやってきたのは定点の築堤下。この写真には2匹の猫が写っているが、探し出すのは不可能に近いと思う。
こちらは常駐の黒い母。目印は鼻の下の小さな白いぽっち(鼻水にあらず)。
日差しが強い上に白っぽい背景なので、黒い塊に目が二つだけの絵になっちゃう。まあ黒猫だからその通りなんだけれども。
去年の夏に見かけた子猫だ! あの時は霜降りがもう1匹、二毛っぽいのもいたけど(こちらの左側)、この子はキジ霜降り、いわゆる一つのbrown ticked tabbyだ。しばらく見ない間にずいぶん立派になったねえ。
オートフォーカス迷う君に会いたくて選んだ散歩コースだったが、あいにく今日は不在。がっかりして隣の駐車場を見ると、代わりに三毛が現れた。
散歩は以上で終わったが、距離が4.6kmと短かったため、だいぶ時間が余ってしまった。時間を潰そうと思って入ったカフェは、隣の中年カップルがマスクもせずに喋り散らかしており、いたたまれずに10分で退散。ほかに居場所もないので、多摩センターから再び電車に乗って、とある駅前の白に会いに行くことにした。
つかつかと近寄ってきた白。この子に会うため、わざわざ遠くから訪ねてくる人も多いようだが、誰もいないみたいでちょうど良かった。
休日の静かな小駅で、白とともにまったりした時間を過ごした。電車の時間になって駅舎に入ると、ちょうど入れ違いに若い女性が階段を下りてきて、白の許へ駆け寄っていった。連休中の猫は人間の相手で忙しそうだ。