何度も連休が続いたためすっかり労働意欲をなくしてしまい、久しぶりの出勤となった今朝は生ける屍のような風体でのろのろと仕度して家を出た。猫散歩は西立川~立川を歩くことにしていたが、曇ってじめじめしているだけならまだしも、15m/sを超える強い南風が間断なく吹きつけてきて、散歩にはまったく不向きな天気になっていた。実際、西立川に着いてみると巨大黒猫のねぐらはもぬけの殻だったし、いないことの方が珍しいエビ邸のエビ子さえ、近所を駆け回っているらしく不在だった。
当てにしていた2匹に会えず、労働意欲だけでなく猫散歩の意欲まで失いそうになって歩いていると、前方の高みからこちらを見下ろす目線に気づいた。スタートから15分後のことだった。
しかし、向こうはこちらを訝しんでいる。いくら舌を鳴らしても硬い表情を崩さなかった。
……そして、そんな俺たちの一部始終はしっかり見られていたのだった。
矛先が自分に向いたことを悟って建物の隙間に逃げ込んだ三毛。いい子だから出ておいでー。
ここは灰色の熟女・青2号の路地。本人は不在だったが、2軒隣に子猫らしき猫影を認めた。
でかいのはきょとんとしている。いくら俺が猫の性別判定が苦手だと言っても、さすがにこれは間違えようがない。
この子も細面で耳が大きいから幼く見えるが、去年の10月にも会っているので子猫ではない。ちょっと年齢不詳の子。
お腹に仔猫が入ってる。たくさん食べて赤ちゃんの分まで栄養をつけないといけないよ。
身重の麦わらのあとを追って先ほどの黒白が現れた。虚空の何かと対峙しているように見えるのは……、
スタート直後のダメな感じとは裏腹に、今日の散歩は後半になるほど運が上がる感じ。とある団地で7ヶ月ぶりにオッド1号を見かけた。
カメラを向けると逃げる素振りを見せたが、面倒を見ているおじさんが傍らについているので、何とか持ち堪えている。
今日最後の幸運は去年6月以来の美人人妻三毛ちゃん。この1年近く、玄関前に置かれたお皿を見ては会いたい気持ちを募らせていたので、嬉しさもひとしお。
久しぶりの逢瀬を楽しもうと思ったのも束の間、ものすごい音とともにビル風が吹き下ろして、驚いた三毛ちゃんは高い塀の向こう側へ走り去ってしまった。次に会えるまでまた1年待たなきゃならないのだろうか。そんなことしてたら俺あっという間にお爺ちゃんだよ……。