蘭嶼というのは台東県の南東沖に浮かぶ周囲約40kmの小さな島で、フィリピンのバタン諸島から渡ってきたとされる原住民が4,000人ほど暮らしている。タオ族と呼ばれる彼らの風俗や言語などはバタン諸島で暮らすイヴァタン族とよく似ているのだそうで、もしそうならこれらの島に住む猫の毛色にも共通点があるかも知れない。タオ族が海で使うチヌリクランと呼ばれる手漕ぎの船は大きくても10人ほどしか乗れないもので、こうした船に猫を乗せて太平洋を100km以上も渡れるのだとしたら、人類拡散が猫とともに行われたとの仮説を補強してくれる。今日訪れているはずの蘭嶼ではすでに猫に会えていると思うので、いずれ機会があればバタン諸島の猫も見てみたい。旅に出れば出るほど夢は広がる一方、加齢とともにできることが減って行くのは淋しいことだ。
タオ族が話すのはイヴァタン族の言語を受け継ぐタオ語で、それ以外には台湾の国語である台湾華語を話す。日本統治時代を経験した人は日本語も話し、台湾本土の他部族や漢人との共通語にもなっていたそうだが、恐らくその世代はほとんど残っていない。こうした土地に一晩滞在して現地の人たちとうまくコミュニケーションできるのか、出発前から一抹の不安を抱いているが、お腹を満たすにはどこかで外食しなければならず、猫の相手だけして済ませることはできない。ポケトークの話す標準中国語が通じてくれれば助かるが、唐突に現れた日本人の猫好きの性癖を理解してもらえるかどうか。
今日紹介するのは今月8日の出勤前、分倍河原から多磨霊園(という名の駅)まで歩いて見かけた猫たち。9時出社だと時間に余裕がなく、途中で足止めを食うなどもしたので全区間歩き切ることはできず、途中の府中競馬正門前(という名の駅)~東府中の1駅は電車を利用した。この区間にはかつて線路端に住む薄色三毛がいたが、今はもう会うことは叶わない。
スタートしてから1分ほどで巡回帰りと思しきキジトラ(たぶんこの子)を見かけたが、呼びかけに応じてもらえずスルー。最初にカメラに収まったのはご飯待ちと思しき黒白だった。あの子もずっと会いたかった子。
去年の秋ごろ屋根の上にいるのを見かけたが、地上となると去年1月以来。少しくたびれちゃったかねえ。
ここには路地を挟んでご飯の家が2軒ある。タイル塀の奥がそのうちの一つ。
以前は夜勤の行き帰りに見かけることが多く、たいてい向かいの家でご飯を食べていた。朝昼夜で使い分けているとか?
この家で三毛を何度か見かけたことはあるが、黒白はたぶん初めて。たまにでも来てみると新しい出会いがあるものだな。
このころ東京では尋常ではない量のスギ花粉が飛散しており、この日も朝から黄色い日差しが降り注いでいた。猫は庇の上でまったりしているけど、これはちょっと分かりにくいかな。
毛色はキジ渦、いわゆる一つのbrown classic tabbyのようだね。もう少し近くで見たいなあ。
警戒しつつも立ち上がってくれたので、胴体の模様を拝むことができた。去年7月にもこの近くでキジ渦を見かけていて、当然同一人物だろうと思っていたが、帰宅してから調べたらよく似た別人だった。親戚か何かかも知れないが、白斑のないクラシックタビーを複数見かけるのは割と珍しい。