台湾を旅したことは何度もあるが、首都の台北に滞在したことは一度もなく、どこへ行くにしても毎回必ず立ち寄るのが瑞芳というのは、俺が東京都心よりも八王子などの郊外を好むのと同じ理由だ。ちゃんと探せば台北市内にも猫はいるのだろうが、狭っ苦しくて交通量の多い街は性に合わない。地方への玄関口とも言うべき瑞芳は単なるベッドタウンではなく、かつて鉱業の街だっだ面影が今も残っていて、俺はそうした場所に強い郷愁を感じる。
しかし雨の都と呼ばれる基隆からほど近い瑞芳もまた雨の街。初日から晴れ続きで腕も顔も真っ赤になった今回の台湾猫旅だったが、帰国日となった6日目(3月24日)は朝から霧雨が音もなく降っていて、散歩の邪魔になることが分かっていても、傘を買わずに済ませることはできなかった。あまりにも残念だったので調べてみたら、台湾の週刊誌に「日照時數南北最高差757倍」という記事があり、去年の春節前後の基隆の日照時間は2週間でわずか0.1時間だったそうだ。757倍というのは同時期の恆春(75.7時間)との比較だが、恆春は恆春でこの季節は落山風と呼ばれる強風が吹き荒れるので、猫を探す身にとってはどちらもありがたくない。
前夜は22時すぎに宿に入ったので眠かったが頑張って6時起床(前回の記事はこちら)。多少でも明るくなるのを待って7:20ごろ散歩を開始したが、老街を形成する駅北側には猫一匹おらず、予想通り南側の民族街や民權街の猫溜まりまで足を延ばす必要があった。民族街にはとても人懐っこいキジトラ(この子とこの子)がいて、コロナで足止めを食っている間じゅう安否が気になっていたが、この天気ではいたとしても出てきそうにない。
でもあのキジ白がいるのだから、キジトラたちもきっと元気にしているはず。
2019年9月以来のキジ白。よくぞご無事で。
こちらは感無量だがあちらはそうでもないらしく、そそくさとタクシーの下へ逃亡。道路向かいにも雨宿りしているのがいるね。
声をかけたらぎょっとした表情でこちらを向いた。お休みのところ済みませんね。
霧雨はそれほど強くはなく、雨量計でも検知しないほどだったが、猫は濡れるのを嫌って車の下に佇んでいる。朝の気温は18.0℃で長袖のシャツでも少し肌寒く感じる。
こちらの黒白も嬉しい再会。前回(2019年1月)よりも毛並みが良くなっている。確かここから100mほど離れた小吃店で暮らしていたはずだが、もう4年以上も前のことなので移籍したのかも知れない。
軒下で雨宿りしているつもりの猫もいた。ちょっとはみ出ているみたいだよ。
瑞芳といえば駅前の茶渦ファミリーに会うのが定番だが、この天気で出てくる見込みは薄い。一応は覗いてみたもののいないことだけ確認してその辺をぶらぶらしていると、巡回中と思しき猫が路地の奥からやって来た。あと10分で暖暖へ向かう列車が発車するからこれはラッキー。
駅構内で猫を見かけることはよくあるけど、この子は初めて。細かな雨粒が背中を濡らしていく。
いつも瑞芳とセットで訪れている暖暖へは9:37発の区間車で行く予定だったが、雨模様の瑞芳で粘るのが辛くなってきたので1本前倒しした。しかし瑞芳よりも基隆に近い暖暖が晴れているということはなく、次に見かけたのもやはり濡れそぼつ猫。
この路地には友好的なのが多いはずだけど、この子はなかなか近寄らせてくれない。
媽祖廟前の上り坂。2年4ヶ月ぶりの黒白がずっとそこにいたかのように佇んでいた。
この子は過去の記事を紐解かなくてもはっきり覚えている。逃げ腰なのに逃げるわけでもなく、俺のあとをついて回る子。
車の下から茶色いのも出てきた。きっとほかにもたくさん隠れているんだろうなあ。
暖暖散歩はこれでおしまい。最終回の次回は暖暖から平溪線直通の区間車に揺られ、懐かしの猫たちを訪ねて菁桐の山奥へと分け入る。