昨日と今日の休暇はどちらも朝から猫散歩に出るつもりだったが、案の定というか、奥多摩の疲れが残ってしまって今朝は布団から出られなかった。昨日も今日も夏日を記録するほどの暑さで、朝の気温の低いうちから活動するとてきめんに体調を崩すし、一日を通して着られる服もないので検討することすら面倒臭い。ちなみに明日の夜勤は長大報告書を一晩でまとめるプロジェクト(自称)を割り当てているので、散歩もブログの更新もお休みすると思う。
そういうわけで、今日の記事は先月23〜25日、2泊3日の旅程で訪問した伊豆諸島猫旅の八丈島編を。八丈島というのは東京都の島嶼では大島に次いで大きく、面積は約69.5km²で山手線の輪っかとほぼ同じ広さ。7,500人いる住民のうち7割近くは二つの火山に挟まれた平野部、つまり瓢簞型の窪みの部分に住んでいるので、猫の分布も基本的にはそれと一致しているが、ほかの島々と同様に相当数の野猫も存在しているようだ。住宅エリアの猫は比較的フレンドリーだが、人口希薄エリアで見かける猫はどれも警戒心が強く、カメラを構える間もなく逃げられることが多かった。同じ離島でも式根島あたりの人慣れした野猫とはずいぶん反応が違うので最初はとまどった。
時は先月24日の猫旅2日目、この日は宿を6時半に出発し、初っ端からたくさんの猫に遭遇したのは前回の記事に書いた通り。散歩できるのは青ヶ島行きの船が出る9時半までで、乗船手続きに要する時間を考えれば9時には出発港の底土港にたどり着きたい。
とある民宿の前に集まる猫群に遭遇したのは7時半すぎ。ゆっくり構っていく時間はあるものの、あちらがそれを許してくれるかどうか……。
青い目のポイントさんは客慣れているらしく、舌を鳴らしたくらいでは目線もくれない。
隣の入口で香箱を組んでいた黒白は割と友好的。
不審者に目を細めている。この辺りは人口密度が高いようなので、そうそう逃げないと思うんだけど。
八丈島の猫はここまででキジ、黒、茶という「猫の三原色」が揃っているし、白斑はもちろん白猫やカラーポイントも見かけた。模様については渦巻きは1匹だけだが霜降りは突出して多かった。東京から300km近く離れているとはいえ、古くから人の行き来があった土地だし、航海中の船倉や農作物の鼠害対策のために、本土から持ち込まれた猫がそのまま繁殖していると見ていいと思う。霜降りはかなり古い時代に持ち込まれた1匹を祖先に持つ子孫たちかも知れない。式根島では同様にティッピングが突出して多く、これらはいずれも優性遺伝である点が共通している。ちなみに八丈島の犬(イエイヌ)は縄文時代から存在していたことが分かっている。
手前のコンクリートの構造物は昔の貯水槽かな。上に乗っかっている茶色いのはお母さんかな。
耳の切り欠きはオスを示しているけど、あれぜんぜん当てにならないんだよなあ。
道路を渡ろうとして俺をやり過ごそうとしている子猫群はこちら。少なくとも左右の2匹は霜降りだね。さっきのがお母さんだとしたら、OOという茶色遺伝子とUUという霜降り遺伝子を優性ホモで持っているんだろうね。
霜降りは東南アジアに多い毛色なので、八丈島との関連を疑ってみたけど、そういう事実は見つからなかった。出所はやっぱり本土だろうな。
引いてみると植生が亜熱帯っぽくて関東という気がしない。緯度的には大分市と同じなのでまあ当然なのだけれど。
椰子の葉っぱの隙間から訝しげに顔を出した2匹の子猫。緯度が低い分、子猫の出産ラッシュも春に集中しているわけではないのかも知れない。
八丈島の散歩はここで終わり、1kmほど離れた東海汽船の船乗り場に到着したのは9時ちょうど。就航率の低い青ヶ島航路ではあるが、昨日から続く好天で欠航や条件付き運航の可能性はほぼなく、乗船券売り場ではすんなりと片道乗船券を購入できた。この船は予約制ではないので就航さえすればその場で買えるが、事前に島内の宿泊施設を確保できていることが発券の条件になっている。青ヶ島すなわち青ヶ島村の人口はわずか170人で、島内には民宿が6軒あるだけなので、最大収容人数は島全体で100人に満たない。そこには公共工事の関係者や官庁の出張組も含まれるので、帰りの船が欠航しても飛び込み客の面倒まで見る余裕はないのである。なので俺も島の宿やレンタカーを予約する時は行き帰りの足が確保できているか聞かれたし、乗船券を買う時もどこの宿に泊まるのかきっちり確認された。俺自身も2日間の休暇(3日目の夕方から夜勤)に無理矢理ねじ込んだ旅程なので、より安全に、行きは就航率の低い(運賃も安い)船を選び、帰りは就航率の高い(運賃も高い)ヘリコプターを予約した。海況が悪くて渡航できなければツキのなさを嘆けばいいが、島に閉じ込められるのは切実に困るからだ。
船の就欠航情報についても、わざわざ俺が連絡せずとも青ヶ島村民には伝わっているわけであるが、お世話になる側の礼儀として、乗船券を買った時点で予定通り向かっている旨を電話連絡することにしていた。レンタカー屋のお姉さんにはすんなり繋がったが、民宿は何度かけてもダメで、ようやく繋がったのは船が離岸した直後。青ヶ島に渡れる喜びから高揚して話す俺に民宿のオヤジはのたまった。「予約、入っていませんねえ」。