猫を訪ねて伊豆諸島8(八丈島)


八丈町の猫

 東京都というのは大きく分けて区部、多摩地区、島嶼部からなる三つのエリアで構成されている。区部というのは言わずもがなの23区、多摩地区は区部の西側に展開する26市3町1村、島嶼部は伊豆諸島と小笠原諸島の2町7村。今回の猫旅で訪れた八丈島は新宿の都庁から290km南の太平洋上にあり、緯度は大分県佐伯市と同じくらい。小笠原諸島に属する沖ノ鳥島に至っては都庁から1,740kmも離れている。
 地方に住む人がテレビなどで知る「東京」の多くは区部だと思うが、多摩や島嶼にもそれを凌駕する興味深いスポットが無数に存在する。俺が最初にそのことを知ったのは23区から国分寺市へ引っ越した22歳のころで、もっと濃厚に知ったのは猫を探して散歩するようになった2011年、自宅や職場のあった昭島市や立川市を繰り返し歩くようになってからだった。生物、気象、地理、地学など、子供のころ興味のあった分野すべてに対して、まるで誂えたかのように様々な面白い事象があった。猫もさることながら、そうした自分のすぐ手の届くところにある興味深い事象に、もっと早くから目を向けておくんだったと後悔したがもう遅い。2011年の時点で俺は44歳になっていたので、この楽しい趣味を今後それほど長く続けることはできない。なので、俺にとって普段の猫散歩や時々出かける猫旅は、少しでも遅れを取り戻すために必須のイベントなのである。例えば、もう一度御蔵島に行っても猫に会える保証はないしお金もかかるが、そのような強い動機のお陰で猫以外にも様々なものに触れることができて、辛うじて自我を保っていられる。
 ……などと色々考えながら旅行後の写真整理をしていたせいか、猫旅初日(今月23日)の最後に撮った写真の存在を忘れていて前回の記事に載せなかった。時刻は16時半、日没直前の築港にぽつねんと佇んでいたのはサビ。奥に写っている小高い山は八丈小島。
八丈町の猫

八丈町の猫

 懐きもしない代わりに逃げもしないサビ。この日の写真撮影はこれが最後で、このあと八丈島で実施中という自動運転実証実験バスに便乗させてもらって宿へ向かった。当初はタクシーを呼ぶつもりだったが、たまたまタダで乗れるバスが来てくれて助かった(ただしスピードはとても遅かった)。
八丈町の猫

 翌24日も朝から快晴。宿を出るのは6時半と決めていたので朝食は抜いており、そこから底土港まであっちふらふらこっちふらふらするのがこの日最初の散歩だ。八丈島すなわち八丈町の猫は昨日の夕方にわんさか会っているので、東京都全自治体制覇という点では気が楽で、俺の興味は早くも次の散歩地に向いていたりもする。
 この日は底土港を9:30に出港する船で念願の青ヶ島へ向かうことにしている。港湾施設が貧弱なことなどから、この航路は就航率が低いことで知られており、二重離島でもある青ヶ島は勤め人には非常に行きにくい場所だ。すべての交通機関がダイヤ通りに動いてくれれば日帰りも可能だが、その通りにならないことが多いので、観光客はあらかじめ宿泊施設を確保しておかないと島へ渡ることすら許されない。海況が悪くなって足止めを食っても島に居場所はないし、ヘタするとそれが何日も続くからだ。
 青ヶ島の紹介は追々書くとして、宿を出発して5秒後に発見した猫はとっとと逃げ、最初にカメラに収まったのは30秒後に発見した黒白。初っ端から八丈島の猫密度の高さを実感することになった。
八丈町の猫

 ていうか分かりにくい?
八丈町の猫

 日の出から30分後の日陰はまだ暗い。止まり木の鳥のような黒白の瞳もまだ大きい。
八丈町の猫

 民宿から50mほど離れた場所でさらに1匹。こちらは見るからにご飯待ち。
八丈町の猫

八丈町の猫

 カメラを向けたら面倒臭そうに首をもたげた。
八丈町の猫

 先ほどから遠くに見えている円錐形の山は標高854mの八丈富士。正式名称を西山といい、南東側の東山(標高701m)と対をなして瓢簞型の八丈島を形成している。なお猫は3匹見えている。
八丈町の猫

八丈町の猫

 先に塀側の2匹と思ったらキジトラがとっとと逃亡。残った長毛茶トラ白も風前の灯。
八丈町の猫

 前回の記事にも書いたように八丈島ではボブテイルの猫が目につく。ここは昨日の夕方に立ち寄った猫スポットから直線距離で3.5km離れているので恐らく彼らの近縁ではなく、もっと古い時代に枝分かれした子孫ではないかと思う(もちろん人が運んで来た可能性もあるが)。
八丈町の猫

 残る1匹は民家の濡れ縁。式根島でたくさん見かけたティッピング入りのレッドという毛色。
八丈町の猫

 Oh、三毛ちゃんは気づかなかった……。
八丈町の猫

 昨日の朝に比べると雲は多いが風はなく、遠くに見える海も穏やかに感じる。船の就欠航は当日の朝7時に発表されるが、地元の人も「この天気なら数日は大丈夫」と言っており、すでに7時を過ぎていてもわざわざ電話して確認する気にならない。どちらに転んだところで離島でできることは限られているし、今のところ猫に会えていて精神的充足度が高いからでもある。
八丈町の猫

 ほら、またいた。
八丈町の猫

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 茂みの向こうを覗いてみたら2匹どころじゃなかった。これはまあ猫団体様専用の朝食会場であろうな。
八丈町の猫

「今ごろ来たって遅いよ」
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「最後尾は私だから、食べたいならこの後ろに並びなさい」
八丈町の猫

 ハイビスカスと猫。緯度的には九州だと思えば朝から暑いのもまあ納得。
八丈町の猫

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 あっ、待って、話を聞いてくれー。
八丈町の猫

「待てと言われて待ちるどんごはありません」
八丈町の猫

 民宿の玄関先に複雑な模様の猫発見。これはオートフォーカス迷う君を上回る?
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「いやーそれほどでも」
八丈町の猫

八丈町の猫

 近寄ってみると奥の方から睨みを利かすのがもう1匹。次回はあいつから紹介することにして、今日のところはとりあえずここまで。なお八丈島編はもう1回、猫旅全体では計7回(残り5回)の連載になるので、しばらく気長にお付き合いください。
八丈町の猫


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