昨日の谷保〜立川散歩の途中、上矢印邸に立ち寄って敷地を覗いてみたものの空振りで、がっかりして立ち去ろうとしたところ、たまたま隣の家の奥さんが出てきたので話を聞いてみた。最初は不審そうにしていた奥さんだったが、上矢印ちゃんの写真を見せたらにっこり微笑んで「元気にしているよ」と教えてくれた。最近まったく姿を見せないのでほとんど諦めていたが、そういうことなら根気よく通い続けるしかないだろうなあ。ああ良かった。
昨夜から風雨を伴った大荒れの空模様となり、今日は一歩も家から出ることなく怠惰に過ごして終わった。我が家の猫たちも気怠げにしていてあまり動かなかったが、これは怠け者のニンゲンに付き合ってそうしているのか、それとも気圧か何かが影響しているのかよく分からない。俺は気圧が体調に影響するという説には懐疑的だが、猫は体が小さいのでニンゲンよりも感受性が強いことは考えられる。もしそうだとしたら、先日話題になった飛行機にペットを乗せるべきかという話も、離着陸時の短い時間で200hPa以上も変動することを考えれば、とてもじゃないが可哀想すぎて無理という結論になる。脱線しちゃうのでこれ以上は書かないけれども。
天気の悪い日は猫旅のレポートを進めるにはいいチャンスなので、今日は前回に続いて猫旅2日目(先月20日)、台湾における第二の故郷とも言える瑞芳で見かけた猫たちを紹介していく。瑞芳は九份観光の拠点になっていることから、駅前からバスやタクシーに乗ったとか、周辺を散策したとかいう人は多いだろうが、普通の観光客が見物して面白い街かとなるとちょっと微妙のようにも思う。いちばん有名なのは駅前通り(中正路)の突き当たりにある美食広場だと思うが、ほかにはこれといって思い当たらない。かつて炭鉱町だった雰囲気は今もわずかに残っているが、閉山から40年以上も経っており、一見の外国人がそれを嗅ぎ取ることはなかなか難しい。
俺の場合は猫と接することで昔の瑞芳を想像する。夕張に例えれば本町や清水沢のようなこの街に、かつて多くの労働者が溢れ、飲食街や歓楽街が賑わったことは想像に難くない。
だからきっとああいう子たちも当時の末裔だと思う。歓楽街といえば猫。
いつも立ち寄る達玄宮の猫スポット。最初に見かけた2匹に話しかけてみたものの、直ちに散会……。
去年は雨だったからあまり猫がいなかったけど、今日はたくさん出ているね。
時刻は14時すぎでいちばん眠い時間帯。ちなみにこいつは去年も会った子。
昔、ここでとても仲良くしてくれたキジトラがいたんだけど(こちらとこちら)、コロナ前のことだし、やっぱりもう会えないかなあ。
ちょっと散歩してくるから、例の日本人がまた来たってみんなに伝えておいてね。
瑞芳駅を出て明燈路三段を西へ進み、最初の踏切を過ぎたあたりにはかつて選炭場があった。一坑路という街路名で呼ばれるその一帯には、瑞芳一坑と称する炭鉱の鉱区が展開していた。この炭鉱は日本統治時代に基隆炭礦株式會社が経営し、中でも瑞芳一坑は台湾十大炭鉱に数えられるほどの産炭量を誇っていたが、1981年に閉山し、今は基隆河沿いに坑口のレプリカが残るだけとなっている。炭鉱時代のものと思しき質素な家屋が犇めくように建ち並ぶ中で、ひときわ目立つのは鉄筋コンクリート4階建ての瑞芳礦工醫院だ。礦工醫院を日本風に言えば坑内員病院、つまり炭鉱病院が今も残っていることにはとても驚いた。危険と隣り合わせの坑内労働者にとって病院との縁は切っても切れないもので、中でも整形外科はひとたび事故が起きれば修羅場と化す。ちなみに俺の父親が育った夕張の鹿島地区にも三菱大夕張炭鉱病院というのがあり、札幌医大の講師だった渡辺淳一が出張医として赴任していたのは有名な話だ。炭鉱病院というのは整形外科医にとって格好の修練場だとどこかに書いていたように思うが記憶が定かではない。
時代に取り残されたかのような一坑路の街なかは碁盤目状に区画整理されておらず、さながら世田谷迷路のようで分かりにくい。地図に目を落としながら歩いていると、そこで暮らす猫たちも日本統治時代からの血筋に見えてくるから不思議だ。
台湾は日本語が通じやすい方だと思うけど、さすがに猫は無理だったか。
一坑路で何匹も逃げられ、やや凹んだまま大通りに出ると、道路向こうにもお寛ぎ中の猫がいた。
また三毛ちゃんだ。今度は「小三花你好! 我是日本遊客」でどう?
その辺を一回りして先ほどの猫スポットへ戻っていると、1匹の猫が行く手を横切った。
先回りして待っていたら車の陰から出てきた。霜降りの毛色、久しぶりに見たかも。
50分ぶりに達玄宮へ戻ると、黒いのが1匹、手持ち無沙汰な感じで道端に座っていた。
この子はさっき2匹いた黒とは別人。ここへ通うようになって10年近くになるけど、最近は黒の勢力が増して来ているのだろうか。できれば馴染のキジトラやほかの顔見知りにも挨拶したいから、もう少しここで待ってみようかな(次回へ続く)。