昔、ディスコで踊った曲が思い出せない。今日はiTunes Storeで片っ端からディスコミュージックを試聴する一日だった。
今はもう跡形もないと思うが、俺が高校生のころ、函館にはまだ交通の要衝としての賑わいが残っていて、繁華街には何軒かのディスコもあった。コンクール間近の吹奏楽部の練習帰り、付き合い始めたばかりの女の子に連れられて行ったのが俺のディスコデビューで、それでドハマリして友達同士や一人でも行くようになった。男女とも賑やかなのが多い吹奏楽部にあって、彼女は物静かな性格で成績が良く、にもかかわらずうちのようなバカ高校を選んだのは、制服が可愛いというただそれだけの理由だと聞いていた。煌めくミラーボールの下で向かい合い、一緒にステップを踏んでいると、彼女の色白な顔が薄紅色に上気して、額に浮かんだ汗が薄明るい照明に光っていた。上目遣いでやや苦しげに俺を見つめる彼女の表情は、それまで経験したことのない不思議な魅力を伴って俺を圧倒した。なぜ高校に入学して半年も経たない女生徒がディスコの会員証を持ち、流行りの洋楽で流暢に踊れるのか、15歳の俺は幼すぎて想像すらできなかった。
……そんな怠惰な一日ではあったが、「君の瞳に恋してる」はアルバムで買っちゃいけないことを学んだし、猫関係業務もちゃんと済ませてきた。今日のコースは横浜線猫行脚のラス前となる、八王子みなみ野から片倉まで。
八王子みなみ野というのは「みなみ野シティ」という新興住宅街の中心駅だ。街開きは1997年というから20年の歴史を持つわけだが、これは集落形成という観点からは取るに足らない期間で、猫的に考えても1~2世代分でしかないので、散歩コースとしての魅力はまったくない。実際、自宅や職場から比較的行きやすいにもかかわらず、歩いたことはたった1回しかない(こちら)。区画整理エリアから出れば里山が広がっているので、日が高くなって暑くなる前にたどり着こうと急ぎ足で歩いていると、目立たないところでちょこんとしているのがいた。
ニュータウンの貴重な1匹。腰浮かしちゃってるけど、もう少し堪えてくれー。
次の猫はさらに40分後。時刻は8時で気温は20℃ほどだが、猫影はとても薄い。
片倉駅の近くでは茶色いのを2匹見かけた。1匹目は時々ギターケースで寝ている茶トラと……、
会うのは約2年半ぶり。とても人懐っこいはずだが、今日は眠気が勝るのか、いくら呼んでもダメだった。
猫ヶ丘には茶トラ白のほか、黒っぽいのが2匹いた。ここにはもうそんなに猫いないはずなんだけどな。
近寄ってみたら一緒にいたのは狸だった。2匹とも疥癬症で脱毛がひどく、かなり衰弱しているようだった。疥癬症に罹ると全身が耐えがたい痒みに襲われ、狩猟などの生存活動がままならないだけでなく、脱毛により体温調節ができなくなるため、ほとんど例外なく致死的な転帰をたどるそうだ。3月にも見かけているので、この家から出てくる猫の餌で糊口を凌いでいるのかも知れない。
ここでは家畜も野生も苦労しているんだな。人間だって腰を曲げて歩いているし、こんな丘陵地に住んだっていいことないよ。