今日から16日まで台湾へ猫探しの旅に出かけているので、これから5日間はあらかじめ準備しておいた記事を予約投稿でお送りする。初日の今日は中華航空223便で羽田から台北松山空港へ飛び、台北捷運の文湖線で南港展覽館へ移動。先日書いたように、中華電信ショップで計量型のプリペイドSIMを調達したあと、南港周辺で最初の猫探しをすることにしている。今回の猫旅のテーマは「台湾の東西南北完訪」で、まずは「北」の台北市内で猫を見つけようという魂胆だ。南港のあと瑞芳の茶渦ファミリーを訪ね、夕方には七堵から件の432次普悠瑪に乗って今夜の宿泊地を目指す。このブログが公開される18時(台湾時間17時)ごろ、俺は普悠瑪号の車中で茶葉蛋でも食っているだろう。
今日紹介するのは、先月4日、0泊2日の弾丸スケジュールで行った輪島猫散歩の最終回(前回はこちら)。前日の日勤が終わったあと、バスタ新宿から七尾行きの夜行バスに乗り、金沢駅前に到着したのは4日早朝の5:20。駅近くで予約しておいたカーシェアリングの車に乗り換えて、のと里山海道をすっ飛ばし、輪島に到着したのは7:10だった。舳倉島へ渡る「ニューへぐら」の乗船締め切りは8:50で、それまでの1時間40分が本土側の散歩タイム。知りもしない土地でやすやすと見つけられるほど甘くはないと思っていたが、蓋を開けてみたら大盛況で、半日にも満たない散歩で連載5回分にもなってしまった。
輪島港を出港したのは9時ちょうど。津軽海峡を見て育った俺の目から見ても、波はそう高いとは思えなかったが、100tほどの小船であるニューへぐらは木の葉のように揺れた。このような場合、甲板に立って水平線を眺めていれば船酔いを防げるんだが、10分ほどそうしているうちに塩まみれになってしまい、そそくさと船室へ退散。結局1時間半の航海の大半を寝て過ごし、舳倉島港へ降り立った時は揺れの錯覚でふらふらになっていた。
前置きが長くなってしまうので、まずは猫を。日陰で寛ぐ鉢割れキジ白の後方に、もう1匹いるのが分かるかな。
さらに後方には海と消波ブロック。君たちを見つけるまでに島を1周半しちゃったよ。
ニューへぐらが舳倉島港に到着したのは10:30。猫発見が12:20で、帰りの出港は15:00。商店すらない島で4時間半の滞在は長すぎると思っていたが、むしろそれで良かったんだな。
入り江は穏やかで天気もいい。誘ったら猫たちも出てきてくれた。
この島は大陸と日本列島を行き来する渡り鳥の休息地になっているため、野鳥観察のメッカと言われ、全国各地からバードウォッチャーが集まるそうだ。確かに猫を探して島を歩いていると、バズーカみたいなレンズをつけた立派なカメラがあちこちに据え付けられて、愛鳥家や研究者と思しき人たちがシャッターチャンスを待っていた。俺のような手持ちの高倍率ズームレンズなど、彼らからすれば子供のおもちゃに等しく、鳥と猫では利益が相反するような気もするので、行き会っても軽く会釈するに留めておいた。
俺は島に渡るまで、ここの猫たちは野猫(イエネコが山野で自活して再び野生化したもの)かも知れないと思っていた。もしそうなら、そう簡単に人間の前には出てこないはずで、見つけることは困難だろうと思っていた。現在、舳倉島に定住する人は少なく、漁のない冬は本土側の本宅で過ごす人が多いと聞くに及び、自活能力のないイエネコが日本海の小島で越冬するのは不可能に思えたからだ。しかしカメラを向ける俺を怖がりもせず、浜辺で遊ぶ猫たちの姿は本土と同じイエネコそのものだ。時には渡り鳥を捕食することもあるらしいが、それで糊口を凌ぐにしては、彼らの顔つきはのほほんとし過ぎているように思えた。
オトナの猫は大人しくしている。魚網の陰はいい塩梅に日差しを和らげてくれる。
思いがけずキジ白家族に会えて、有頂天になって長居してしまった(動画はこちら)。帰りの船までまだ時間があるけど、もう少し島の猫を探してみるよ。
さすがにこの島へ来る機会はもうないだろうなあ。君も元気で大きくなってね。
周囲5kmほどの島をもう一周しても次の猫は見つからず、そろそろイヤになってきたころ、ようやく目立たないところに潜んでいるのを発見。
あー、やっぱり君たちは飼い猫なんだ。野猫は首輪しないもんね。
日本海にぽつんと浮かぶ孤島の猫の首に鈴。海や山で隔てられていても、人間や猫の営みは、途絶することなく繋がっているのだなーと、感動を覚えた一瞬だった。
この島は今昔物語集に「猫の島」と書かれていて、もしそれが本当なら、平安時代かそれより前に、朝鮮半島から渡って来たと見るのが自然だろう。一方、福岡県鐘ヶ崎から移住してきた海人が、輪島市海士町と舳倉島を拠点にして、海女という積極的漁業で生計を立てるようになったのは、17世紀半ばの慶安年間と言われている。海人が陸を歩いて移動してくるわけはなく、航海のお守りやネズミ避けとして、船に猫を乗せて来た可能性は高い。この日俺が会った猫たちのルーツは果たしてどちらなのか、旅を終えて帰宅してからも、郷土史の本をめくりながら想像を巡らすのは、とても楽しい作業なのだった。