台湾猫旅4日目(2018年11月15日)、前回の記事では、台西で17匹の猫に会ったあと、バスに乗って西螺へ向かうところまで紹介した。西螺は2018年1月にも訪れたばかりだが、1年も経たないうちに再訪したのは、前回の滞在時間が50分と短く、急ぎ足で疲れた記憶しかなかったからだ。西螺の延平老街と呼ばれる一角は、日本統治時代の街並みが比較的良い状態で保存されていて、大正~昭和初期にタイムスリップした気分になれる。しかもそこに猫がいるとなれば、そんな歩き方ではもったいない。
しかし冬の日は短く、15時に到着した西螺の街は、すでに日が傾き始めていた。何本かある斗六行きのバスのうち、遅くとも17:45発のに乗ればいいと考えていたが、所詮は田舎町であり、そんなにいても間が持たないし日も落ちる。結局は今回も70分という短い滞在になってしまった。
なお、猫には3匹会えた。
向こうに見えた時点で逃げかけていた茶トラ。流し撮りの練習をさせてくれてありがとう。
茶トラ白の背後に並ぶのは、西螺名物の黒豆醤油。色々な種類があるようだね。
「ここの醤油は日本のとはちょっと違うんだ。大粒の黒豆を甕で半年も寝かせるの。甘みがあって美味しいから、ひとつ買っていっておくれよ」
西螺の醤油は有名だが、液体は飛行機の機内に持ち込みめないから、日本に持ち帰るには具合が悪い。鳴いて訴える茶トラ白の頭をひと撫でして、その場を辞去した。
早くも影が伸びた道端に、この日最後の猫発見。
台湾糖業鉄路の廃止路線を観光用として復活させる構想があるようだ。高鉄雲林駅や虎尾、西螺、斗南などを結ぶそうだから、将来、乗り鉄として再びこの街を訪れることがあるかも知れない。醤油店の客引きは、その時また店先で俺を呼び止めてくれるだろうか。
夕闇迫る西螺の街をあとにしたのは16時すぎ。台西客運の7133系統で台鉄の斗六駅に出て、潮州行きの自強号に乗り、宿泊地の台南に到着したのは18:06だった。
台湾の東西南北完訪のトリを飾る台南散歩は、翌朝7時に安平老街をスタートすることにしている。安平老街は台南駅からバスで30分かかるので、宿もそこで探せば良かったわけだが、最終的には台南後站近くの学生街に建つ掘旅青年旅舎に決めた。2018年1月の猫旅でも利用した宿で、基本的には二段ベッドのドミトリーだが、洒落た個室も何部屋か備えている。従業員は流暢な英語を話すので、俺がろくに話せないことを除けば、意思の疎通もスムーズだ。宿泊料金は1,900元だから、この時のレートで6,900円くらい。安平老街にも民宿はたくさんあるが、どこも可愛い系のブリブリデザインで、日本におけるラブホテルをイメージしてしまって落ち着かない。近隣にコインランドリーがあることも条件の一つだったが、こちらは昨夜新竹で済ませたので必要なくなった。
思えば来台してからというもの、宿でゆっくりできたことはほとんどなかった。初日に泊まった瑞穂温泉はいい湯だったが、夜遅くに到着したので充分に堪能できなかったし、2日目の高雄も3日目の新竹も洗濯で忙しかった。
19時前に宿に入り、何もすることがなくなったこの夜、俺はコンビニで買った台湾啤酒を2本飲んで早々に床に就いた。台湾で酒を飲むのはこれが初めてだった。
……そんな一夜が明け、ついに帰国日となった11月16日、台南駅から大台南公車の2系統に乗り、安平古堡バス停に降り立ったのは7時を少し過ぎたころだった。
赤煉瓦の老街に似合うのはやはりレッドタビー?
「安平古堡というのは1624年、オランダ統治時代に建設された、台湾で最も古い城堡です。煉瓦の城砦で広く知られていますが、大部分は日本統治時代に修復あるいは改築されたもので、オランダ時代に建てられた城砦はほとんど残っていないのですよ」
案内役の三毛は匂い付けに忙しい。縄張り巡視も兼ねているようだ。
ご飯の時間が近づいているのか、付近から盛んに猫の声がする。どこの国も猫のご飯は朝7時なのね。
もう一方の黒はベンチの下でちんまりしている。2018年1月の猫旅では大雨に降られ、散々だった台南でいったいどれだけの猫に会えるのか、胸を膨らませつつ散歩はさらに続くのだった。