ルーツ


立川市の猫

 人が男として生まれるには父親からY染色体をもらう必要があり、それをひたすら過去に遡っていけば、ただ一人の男系祖先に行き着くはずである。実際のところ、現生人類共通の男系祖先は、20~30万年前のアフリカに存在した中の一人と推定されており、今もアフリカに留まり続けている最古の子孫グループは、Y染色体ハプログループAと名付けられている。ハプログループとは染色体のDNA配列(ハプロタイプ)を似たもの同士で分類したものだ。交配を重ねるとともに変異するDNA配列は、異なる性格や身体的特徴といった多様性を生み出し、ひいては文化という形でその地に根付いていく。Y染色体ハプログループは言語系統とも密接に関係しているとされる。
 現在もアフリカに留まっているハプログループもあれば、人類拡散とともにアフリカを飛び出したグループもある。約7万年前にアフリカを出たグループは、DNA配列の変異を起こしながら移動を繰り返し、あるグループはコーカサス地方を経てヨーロッパへ、またあるグループはイランからチベットそして日本などと、世界中にその分布を広げていった。最初に日本に到達したのは3万7千年前のハプログループD1a2a。日本にはそのほかにもO1b2やO2という主だったグループがあり、それぞれ異なる時代・ルートで渡ってきた。
 ところで、野生のリビアヤマネコが家畜化して人間との共生を始めたのは、農業革命以降の約1万5千年前からとされている。日本で確認されている最古の猫の痕跡は、カラカミ遺跡で発掘された弥生時代(およそ1,900年前)の橈骨だが、その一方で、福島県では縄文時代中期(およそ1万年前)の可愛らしいネコ形土製品が出土している。もしかしたら猫はもっとずっと古い時代から人類とともに世界を移動していて、日本には3万7千年前、ハプログループD1a2aの人たちと共に渡ってきたと考えられないだろうか。
 そう思う理由の一つは、地域によって猫の毛色にかなり偏りがあるからだ。例えば台湾や東南アジアにはティックドタビーが多く、人類においてもこれらの地域に住む人々には、O1aというハプログループが高確率で展開している。シャム猫に代表されるカラーポイントの猫は、タイ王国(旧国名シャム国)原産とされ、実際のところタイにとても多いし、クラシックタビーはヨーロッパや北アメリカに多い。これらの事象は、古い時代の人類の拡散経路に起因しているのではないだろうか。
 これを証明するには、例えばカラーポイントの場合、タイ人が高確率で持つハプログループと移動ルートを調べ、そのルート上にカラーポイント猫の多い地域はないか確かめるというやり方が考えられる。俺がよく行く台湾の場合、彼の地の原住民は中国大陸の越族をルーツに持ち、台湾からさらに東南アジアへと拡散しているので、もし長江南岸にティックドタビーが多く分布していれば、猫が人類と一緒に拡散の旅をしていたとの仮説を補強する。
 台湾原住民の言語には猫を表す言葉が存在し、パイワン語ではŋiaw、タイヤル語ではngiaw、セデック語ではmyawと発音するそうだ。越族が話していた百越語の近似言語とされるタイ語ではmæw、百越語の上層言語とされるえつ語ではmaau、閩南語(台湾語)ではniau、客家語ではmeuである。北京語ではmāoだし、日本語にはmyouという読み方がある。それぞれの民族が異なるタイミングで勝手に名付けたなら、これほど似た発音になることは考えにくく、特定のハプログループと一緒に拡散したからこそ、アジア地域に猫の鳴き声のような呼び名が伝播していったのではないだろうか。
 こうしたテーマで猫散歩を捉えるようになったのは、2018年の台湾猫散歩が最初だったが、あまりに壮大すぎて調査の端緒につけてもいない。生きているうちに一つでも調べられたら面白いんだがなあ。
 今日の猫は2匹だけなので、普段なかなか書けない長い前振りからスタートしてみた。
立川市の猫

 猫は奥の方からこちらを睨んでいる。
立川市の猫

 古馴染のチョビ髭。サンダルに前足を乗せて可愛らしい。
立川市の猫

 もう1匹は日陰なので分かりにくいかな。
立川市の猫

立川市の猫

 目をまん丸にしてこちらを見ているのは、学校裏の個性的な息子。できればとセットで紹介したいと思っているが、今はどちらにもなかなか会えなくなってしまった。
立川市の猫

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