猫行脚で駅から駅へと散歩する時は、あちこち迂回して、本来の駅間距離よりもかなり長い距離を歩くことになる。もともと軌道として開業した京王線は特に駅間距離が短く、新宿〜府中に限って言えば平均0.95km、つまり隣の駅まで1kmもない区間が大部分を占めている。府中〜京王八王子は旧地方鉄道法により敷設されたため駅間距離は多少長いが、これは当時の府中以西が田畑ばかりの閑散地域だったことも原因の一つだろう。その名残は現在もあって、俺が3年ほど前まで住んでいた平山城址公園などは、東京薬科大学の学生を運ぶ路線バスの起点にもかかわらず、駅前に商店が一つもないほどのド田舎だった(2021年8月ファミマが開店!)。
話が逸れたが、以前も書いたように聖蹟桜ヶ丘〜平山城址公園の4駅間は未開拓なので、この区間の京王線猫行脚は苦戦することを覚悟していた。今日3回目の挑戦となった百草園〜高幡不動などは、1.7kmの駅間距離に対して1回目は11.6km、2回目は11.0kmも歩く羽目になり、殊にアップダウンの多い経路を選んだ2回目は、疲労のあまり帰宅してからしばらく寝込むことにもなった。しかしここでもたもたしていると、あっという間に暑い夏がやってきて、年内に終点までたどり着けるかどうかも覚束なくなる。3回目の挑戦となる今日は、天気に恵まれたこともあり、20kmぐらい歩く覚悟で踏破に臨んだのだった。
ところが意外なことに、1匹目に遭遇したのはスタートからわずか8分後。前回も1匹目だけは5分で見つけたが(こちら)、それに近い場所だったので、ほかにも猫がいるかも知れないとやにわに期待が高まった。
ここは急峻な山岳住宅地のてっぺんに近く、向こうへ逃げられたらあとを追えない。どうかそのままでいて……。
しかし薄色三毛は無情に逃走。そんな様子を眺めているもう1匹の三毛がいた。
刺激しないようにそおっと階段を上ると、そこにはさらなる三毛がいた。みんな見るからに臆病そう。
「まだまだほかにもいるけど、みんな臆病だから出てくるかどうか」
狭い急坂に入れ替わり立ち替わり猫が出てくる様は、さながら尾道の猫の細道のよう。映像でしか見たことないけど、きっとこんな感じなんだろうなあ。
元来た方を振り向くとこんな感じ。下界は尾道水道じゃないけど猫はいる(2匹)。
1匹は即座に逃走し、この子も間もなく側溝に潜ってしまった。この場所で遭遇した猫は最初の薄色だけがサバ三毛で、残りはすべてキジ三毛。つまり恐らくすべてメスということで、どういう家族構成でこういうことになるのか不思議な場所だった。
三毛だらけの猫溜まりに30分ほど滞在し、時刻は6:50。日が高くならないうちにと先を急いでいると、ほどなく次の猫に遭遇した。
身を低くしたまま動かない。フレンドリーに舌を鳴らしてみたがダメだった。
最初の猫溜まりで呆気なく規定数をクリアしてしまい、やや拍子抜けしたものの、その後はやはり難渋。高幡不動までの8.3kmで見かけたのは次の2匹が最後だった。……ていうか分かりにくい?
駆け去る灰白を見失い、がっかりして元の場所に戻ると、さっきのとは別の猫がこちらを見つめていた。
しかし、やはり逃走。見失いはしなかったものの、疎水の流れる側溝に隠れてしまった。
仲良しな2匹をそれぞれカメラに収めたあとも、さらに1時間40分歩き続けたが、1匹たりとも見つけられず。ゴール地点の高幡不動駅には9時ちょうどに到着した。
この家には今年16歳になるという黒白が暮らしていて、そちらは何度かカメラに収めたことがあるが、この子は初めて見る顔。つぶさに探し回っているつもりでも、近所にはまだまだ知らない猫がいるのだなあ。