休養日と決めていた今日は一歩も外へ出ることなく、たまにぱらつく雨を眺めながら怠惰に過ごした。午前中は撫でられるに任せていた猫たちも、お昼を過ぎると自分の寝床に入り、しつこく触ると怒られるので手出しできなくなる。午後は動画や映画を見るなどして、外が暗くなり始めたころこの文章を書き始めて現在に至る。
今日紹介するのは伊豆四島猫旅の最終回。猫旅2日目(7月22日)は民宿で出された食べ切れないほどの朝食を根性で食べ切り、すぐに勘定を済ませて、この日二度目の散歩をスタートしたのは7:40だった。朝食前の散歩はさほど気温が上がっていなかったので、それほどキツい印象はなかったが、朝食後は日差しが強まり、起伏の多い地形にやられて気息奄々の体。狭い集落ではたくさんの猫を見かけたが、その多くは民家の敷地の奥で寛ぐなどしていて、写真を撮れたのは5割にも満たないのではないかと思う(前回の記事はこちら)。
次の散歩地である利島へは東海汽船の「さるびあ丸」を利用することにしていて、その出航時刻は10:25。まだ2時間もあるというのに、式根島の猫散歩は土壇場で難航し、最後は3匹の猫を見つけて終えることになった。
1匹目は民家の敷地で毛繕い中の二毛。距離があったのでスルーしようと思ったが、今回の猫旅で唯一の長毛だったので撮っておいた。
こちらが式根島で見かけた最後の猫グループ。湿気と坂道にやられ、くたびれ果てて港へ向かっていると、母娘か姉妹と思しき三毛を発見。
一匹はこんな風体。まだ9時半なんだけど、まあここは島だからな……。
よく似た毛色のもう一匹は撮られ慣れているみたい。ここは港と集落を結ぶ往来なので、通りかかった観光客が構って行くのかも。
朝食前後を合わせて9.1km、3時間15分の散歩を終え、野伏港にたどり着いたのは9:45。疲れ切ってはいたが、たくさんの猫に会えたことに満足し、利島への航海中はカーペット敷きの大部屋でごろごろして過ごした。乗船したさるびあ丸は2020年6月に就航したばかりの貨客船で、総トン数6,099tと伊豆諸島航路では最も大きく、海況がいいこともあってほとんど揺れを感じない。汗でずぶ濡れになった衣服が少しでも乾くよう、冷房の効いた船内でひらひらさせるなどしてみたが、風邪を引くような予感がしただけでほとんど効果はなかった。
利島には11:45に到着。下船した人々は迎えの車に乗ってすぐにどこかへ消えてしまうが、俺はこの時だけ気紛れを起こして、散歩の前に帰りの乗船券を買うことにした。何かの勘が働いたのかも知れないが、この行動は本当にラッキーだった。というのも、利島散歩を終えたあとに乗るつもりだった下田行きの「フェリーあぜりあ」は、俺が到着した時にはとっくに出港したあとだったからだ。この船は9:30に下田を出港し、四島を巡って16:30に下田に戻るのだが、曜日によって寄港する順番が変わる。俺が想定していた利島14:45発〜下田16:30着というのは月・木・土曜日の運航パターンで、この日は金曜日だったので逆回りとなり、下田へ向かうフェリーは11:10に出港済みだったのである。
幸い利島を出る最後の船が16:00発だったので、予定外の1泊は避けられたが、行き先は竹芝に変更となり、下田で猫を探したり伊豆急行で乗り鉄することはできなくなった。また倍以上の運賃がかかることになって現金が足りなくなり、島内の郵便局で下ろす羽目にもなった。とはいえ必ずしも悪いことばかりでもなく、利島で散歩する時間が予定より1時間以上長くなった結果、その1時間で見つけられた猫もいたし、一部の人には有名な「世界最小のボウリング場」を見学できたりもした(疲れ切った体で竹芝に降り立つことにはとてもがっかりしたけれど)。
油断すると話が長くなるので利島の猫を。最初に結果を書いておくと、利島散歩で見つけたのは2グループ4匹。利島はそれ一つで利島村という自治体を構成しており、世帯数は187、人口は323人と東京都では最も小さい。特に猫島とも聞いていないので、真夏の数時間で見つけられるのはそんなものだろう。
茂みでまどろんでいたキジ白を見つけて、反対側に回ってみると、隣に茶トラ白もいた。
やっぱり人の住むところには猫がいるんだねえ。会えて嬉しいよ。
最初の2匹をたやすく見つけられたので油断したが、利島散歩は思いのほか厳しかった。気温こそせいぜい30℃程度だったが、雲の切れ目から現れる強い日差しと高い湿度。伊豆諸島は温暖多雨の海洋性気候で、この日もほぼ終日に渡り90〜100%近い湿度を維持していた。しかも利島というのは標高508mの宮塚山を頂点に、茶碗をひっくり返したような円錐型の火山島で、平地もなければ水平な道路もない。小さな集落を貫く急坂を行き来するうちに体力を奪われて、途中1時間ほど村の公共施設で休憩させてもらうことになった。
次の猫を発見したのは、先ほどの2匹と別れてから2時間20分後の14:22。もし下田行きのフェリーが想定通りの出航時刻だったら、この子には会えていなかった。
プスプス言って車の下の黒白の気を引いていると、横から別猫が現れたでござる。
大白斑の黒白は警戒心もあらわ。先に車の下の子から行っとこうか。
2匹はこんな距離感。小さな島のことだから、まあ親戚筋であろうな。
そろりそろりと近寄ってきた大白斑がこのたびの猫旅の最後を飾ってくれた。
最後の利島がとどめを刺してくれたお陰で、真夏に猫散歩するのは無謀ということが改めてよく分かった。伊豆諸島の島々はいずれも火山島のため地形が急峻で、海洋性気候のため湿度も高く、猫を探すには体力の消耗が大きすぎる。昨今の国際情勢により台湾猫旅は一層遠のくばかりだし、あまり遠くへ行く情熱もなくなってきたので、もっと穏やかな季節を選んで、またどこかの島へ渡ってみようかと思っている。今度はもっとたくさんの猫に会えるに違いない(次回へ続く?)。