台湾田舎巡り(2)


金沙鎮の猫

 もともと中華民国には台湾省と福建省という二つの省が存在した。福建省に属していた金門県と連江県の島々は中国大陸から目と鼻の距離にあって、例えば馬祖列島の鐵尖島と対岸の福州市とは海を挟んで8kmほど、金門県の烈嶼とアモイ(廈門島)は5kmしか離れていない。この歴史的経緯に触れることはブログの趣旨から外れるので手短にするが、第二次世界大戦後、日本に代わって台湾を統治した中国国民党と、大陸の中国共産党との間で行われた国共内戦の最前線になったのがこれらの島々だ。今回俺が旅した金門島や烈嶼も軍事拠点として1980年ごろまで砲撃戦が行われていた。観光拠点として整備されるようになったのは1992年の戒厳令解除後のことで、これは両岸情勢の安定化により軍需産業を失った現地経済を救済する政策でもあったようだ。時代が下って2008年には小三通と呼ばれる大陸との経済交流が進められ、金門島とアモイを結ぶ航路は外国人観光客を含む誰もが自由に利用できるようになった。俺もいずれ金門島からアモイに渡って猫を探そうなどと考えていて、現在はコロナの影響などにより渡航が制限されているものの、金門島に行きたいという思いが消えることはなかった。
 金門島は終戦まで日本の占領を受けていたが統治は行われていなかった。そのため台湾本島に対してなされたような都市開発や資源開発もなく、この地には今も中国・福建の古き良き佇まいが数多く残されている。その代表的なものの一つが華やかなタイルや赤レンガが特徴的な閩南びんなん建築で、コロナ後はぜひこの目でそれを見て、そこで暮らす猫たちも会いたいと強く思っていた。ちなみに閩南というのは大陸の福建省南部を差す言葉で、閩南語はそこで暮らす人々が話す中国語の方言だ。台湾で話される台湾語(台湾華語とは異なる)の元になった言語でもあり、つまり福建というのはいにしえの時代に大陸から台湾へ渡ってきた漢人の故郷でもある。数は少ないが閩南建築は台北などの都市部にも残されているし、台南や高雄などの南部に行けば中高年者の多くが台湾語を操っている。
 前置きが長くなって恐縮だが、頑張って短くした結果がこれなので勘弁。台湾猫旅の初日、3月19日はそんな金門県金沙鎮から散歩をスタートし、物陰の少ない閩南式建築のお陰もあって猫は順調に見つかる。夕方と呼ぶにはやや早い時間帯のせいか、お昼寝しているのが多いようだった(前回の記事はこちら)。
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金沙鎮の猫

 プスプス言ったら鋭く反応。
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 次の猫は割と大胆なところで寝ている。本土と違ってスクーターもあまり通らないし、猫が暮らすにはいい環境かも。
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 すやすや。
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金沙鎮の猫

 今度はシャッター音に反応。お休み中のところ済みませんね。
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 小柄な茶トラ白の向こうにもう1匹。お尻をこちらに向けているのが分かるかな。
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 台湾によく見られる赤茶けた毛色のキジトラ。縞模様が黒い本来の(?)キジトラとはだいぶ印象が違うけど、これはやはり食餌の違いなのかなあ。
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 食餌にチロシン(アミノ酸の一種)が不足していると、メラニン色素が充分に合成されず、全体的に赤茶けるらしいんだけど、何で読んだか記録を残していなくて思い出せない……。
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 君はもともと赤っぽいから分かんないな。
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 路地の片隅で人待ち顔のキジトラ発見。
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金沙鎮の猫

 カメラを向けたらバナナの下へ退避。ここは食べ物が豊富で羨ましいな。
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「バナナなんか食べられないよ」
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 同じキジトラでもこちらはだいぶ黒っぽいね。
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 猫の向こうには閩南様式の赤っぽい住宅が建ち並んでいる。古い時代のを保存しているだけでなく、新たに建てられているのも相当数あるようだ。
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 きょとんとしておるな。
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 道端の猫がこちらに背中を向けていた。
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 犬が現れて塀の上に飛び退いた。犬は機嫌が良さそう。
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 猫と犬の関係性、今回の台湾猫旅でたくさん目にしたけど、異種動物だからといって必ずしも仲が悪いということはなく、猫同士にも相性の良し悪しがあるように、猫と犬もそれと同じぐらいの割合で仲がいいのと悪いのがいた。
金沙鎮の猫

金沙鎮の猫

 台湾猫旅初日の散歩は金沙鎮のキジトラ子猫で終了。このあと沙美車站(バスターミナル)からバスに乗り、去年10月に開通したばかりの金門大橋を渡って隣の烈嶼へ向かった。烈嶼は小金門とも呼ばれる小さな島で、この日の宿泊と翌日午前中の散歩地に選んだ場所だ。2回の乗り換えで青岐と呼ばれる集落にたどり着いたのは19時ちょうど。ここで俺は宿の人に多大なる親切を受けることになった。この続きはまた今度
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