1月12日、2018年台湾猫旅は快晴の最終日を迎えた。
お天気アプリを見るとほぼ台湾全土が晴れたようで、どこへ行っても日差しを待ち侘びた猫たちがわんさか出てくるものと思われたが、そんな中、雨リベンジの地に虎尾を選んだことが吉と出るか凶と出るか。虎尾というのは台湾糖業の虎尾工場や国立虎尾科技大学(4学部19学科10研究所)を擁する人口7万人の鎮であり、猫を探すにはやや規模の大きな街だ。日が高くなってスクーターが多くなると、隠れてしまって見つけにくくなるので、この日の散歩はきっかり7時にスタートした(前回の記事はこちら)。
かつて台湾は製糖業が主要産業の一つで、サトウキビ畑の広がる南部の平野には、シュガートレイン(サトウキビを運搬する軽便鉄道)の線路が毛細血管のように敷かれていたそうだ。しかし精糖産業の斜陽化に伴って次第に縮小し、現在は虎尾の馬公厝線という15kmほどの路線が残るのみ。五分車と呼ばれる小さな貨車が連なって、畑と工場を行き来する姿は、冬の虎尾の風物詩になっている。
宿を出て最初に向かったのはその線路端。収穫期に入って今シーズンも運転が始まっていることは、レールの光り具合から見て取れたが、あいにくこの日は運休らしく、踏切に踏切警手が配置されていない。長雨でサトウキビの刈り取りができなかったのだろう。
鉄オタとしてシュガートレインが拝めないのは残念だったが、猫には逃げられずに済むから猫オタとしては助かる。放射冷却で冷え込む線路端をとぼとぼと歩いていると、どこからか早起きさんの鳴き声が聞こえてきた。
上の方にも茶色いのが1匹。……ええと、俺は某巨大猫型キャラクター会社の泡沫株主でもあるんだけど、その甜甜圏の看板に描かれた正体不明のキャラクターが気になって仕方がないのよね。
「別在意小事。這裡是亞洲(細かいことは気にするな。ここはアジアだ)」
この日の虎尾の日の出時刻は6:42。それから50分ほど経って、ようやく線路端に日が差してきた。3日前の朝にも土砂降りの中を歩いて猫なんか1匹も見つからなかったが、これだけ晴れると、ちゃんと出てくるものだな。
呼んでもなかなか振り向いてもらえなくて、しびれを切らして口笛を吹いたらこの反応。
車の下の小柄なキジ白は、冬毛を纏ってもこもこしているように見える。亜熱帯~熱帯に位置する台湾の猫は、冬毛にはならないのだろうと何となく思っていたが、この日の最低気温は8.0℃。帰国してから中央氣象局のデータを見たら、翌日は5.9℃まで下がっていたから、冬毛じゃないといくら何でも寒いだろう。ただし晴れた日中は冬でも25℃程度まで上がるから難しい。ベルクマンの法則よろしく、体格の小さな猫は冬毛を纏うことで体温を保持し、大きな猫は年中夏毛だけで過ごすのかも知れない(体格が小さいほど体重あたりの体表面積が大きいため体温を奪われやすい)。
日本の秋が柿だらけになるように、台湾もバナナだらけになる季節があるのだろうか。そしてそれは勝手にもいで食べてもいいものなのだろうか。目を丸くして固まる黒猫君に訊ねてみたが、回答はなかった。
虎尾の猫はまだ続く。