台湾猫旅の2日目、11月13日の花蓮県萬榮郷紅葉村は涼やかな朝を迎え、巡回の猫のあとをついてテラスへ出ると、椅子やテーブルが朝露で濡れていた。この子はとても人懐っこくて、こちらが猫好きと分かると、肉球が濡れるのも厭わず、あちこちついて回って落ち着きがない。
昨夜も23時すぎまでこの子と遊んでいたので、まだちょっと眠い(前回の記事はこちら)。
宿の外観。俺のような観光客だけでなく、ひとっ風呂浴びに立ち寄る地元の人も多いようだ。営業時間は7:00〜23:00で、入浴のみの料金は200元。現在のレートだと約736円だから、日本の温泉の日帰り入浴と同じくらい。ちなみに今回の宿泊料はAgodaで1ヶ月前に予約して4,988円だった。
宿泊料は朝食込みだが、瑞穂駅を8:00に発車する莒光号に乗ることにしており、それを食べて行く時間はなかった。宿の小姐は片言の日本語を話せたので、そのことは昨夜のうちに言っておいた。無人の帳場に部屋の鍵を置き、見送りに出てきた黒白としばらく戯れ、名残を断ち切るように駅へ向けて出発したのは6時半のことだった。駅までの道のりを猫を探して歩くのが、この日最初の予定だった。
「瑞穂温泉山荘」と名乗ってはいるものの、宿は瑞穂郷ではなく隣村の萬榮郷にある。萬榮郷の人口は瑞穂郷の半分強の6,500人ほどで、住民の多くは太魯閣族と呼ばれる原住民で占められている。台湾東部には様々な原住民が暮らしていて、部族ごとに街の意匠が異なるので、散歩していて楽しいのは都市部よりもむしろこういう田舎町だ。とはいえ今回の旅は猫旅であるから、猫がいてくれないと始まらないわけだが、そちらの方も心配なさそうだった。宿から300mほど歩いたところで、こちらを窺う子猫の姿があった。
2〜3分歩くと富源渓の支流を渡って瑞穂郷に入る。瑞穂というのは極めて日本的な地名だが、調べたらやはり日本統治時代につけられたそうで、それより前は水尾と称した。主な産業は農牧業で、有名なところでは、瑞穂温泉から紅葉渓を渡った1.5kmほど南に瑞穂牧場というのがある。台湾のコンビニに「瑞穂鮮乳」というブランドの牛乳が置かれているので、記憶にある人も多いと思う。日本の東京都にも同じ名前の瑞穂町というのがあり、以前住んでいた拝島からだと八高線で2駅なので、何度か猫を探しに行ったことがある(一例)。同名のよしみで姉妹都市にでもなっているかと思ったが、東京都瑞穂町の姉妹都市はアメリカのモーガンヒル市。一方、花蓮県瑞穂郷の姉妹都市は秋田県美郷町だそうだ。まったく同じ名前同士だと、紛らわしくてやりにくいのかも知れない。
なだらかな坂の向こうに見えるのは中央山脈の山並み。振り返る俺を見つめるのは門扉の向こうの子猫。
さすがにヒントなしでこの子を見つけることは難しい。か細い鳴き声が聞こえたので見つけられたが、声の主を探し回っている間、犬に吠えられまくって辛かった……。
子猫を撮影して一安心して振り向くと、そんな俺たちを眺める猫がいた。
凜々しい顔立ちの白。丈夫な首輪には予防接種済の鑑札がぶら下がっている。近所の飼い猫かな。
民家に張りついているのはセミロングの白。台湾って白猫が少ないと思っていたけど、そんなことないのかな。被毛を真っ白にするW遺伝子は、猫の被毛色を司る中では最強の遺伝子なので、閉ざされた集団で交配が進めば、自然に増えていく摂理ではあるけれども。
白の住む家を通過したのは7:15。予想以上に猫に会えるため、出発から45分経っても宿から800mしか進んでおらず、8:00発の莒光号に乗ることは難しいように思えてきた。台東線は列車本数が少なく、8:00発がダメなら9:00発の太魯閣号になるわけだが、それだと次の散歩地の玉里が詰まってしまう。玉里までタクシーかなーと思いながら、とある農家に差しかかると、塀の向こうのスクーターに猫が乗っかっていた。
家の人に挨拶して中へ突入。私は日本の猫好きです。しばらくお付き合い願いますよ。
みんな思い思いに動き回っているので、正確な数は分からない。ざっと12〜13匹って感じかな。
隙間から覗いているのは子供たち。正確な数が分からないのは、こういうのが何匹も見え隠れしているから。
敷地に招き入れてくれた阿姨に、「オッドアイは珍しいね」と伝えようとしたものの、どう頑張ってもダメ。わざわざ筆談するほどの話題でもないので、諦めてお礼だけ言ってその場をあとにした。瑞穂駅への散歩は次回へ続く。